連載小説
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1
おじいさまが仰いました。
「すまないのう、お前を差し出すことになってしもうて」

おばあさまが仰いました。
「わし達も精一杯尽くしたんじゃが、力が及ばんかった・・・」

お父さまが仰いました。
「このままでは私たち家族どころか、村そのものが死んでしまう」

お母さまが仰いました。
「私たちは、お前を生贄に差し出さなくてはならない。許しておくれ」

私は、言いました。
「大丈夫ですよ。私がこの身を銀狼様に差し出せば、きっと、この村は救われます」

うまく笑えていたかどうか、私には分かりませんでした。

翌朝、酒で身を清めた私は、村の若者たちによって森へと運ばれて行きました。
幼なじみのラムイが何度か話しかけてくれたようにも思います。ですが、その時の私は不安と恐怖で頭がいっぱいで、とても応答ができるような状態ではありませんでした。

森の中央に着くと、私を運んできた人達はすぐにその場から離れていきました。
ラムイは何度か振り返ってこちらを気にしてくれましたが、じきに姿が見えなくなりました。
私は恐怖に押しつぶされそうで、目をつぶり、堅く手を握っていました。

目の前の木の倒れる音がした瞬間、私は覚悟を決めて正面を向きました
そこに佇んでいたのは、まさしく銀狼様でした。

天まで届くと言われた背丈、山を軽々と越す強靭な脚。
そして何より、その銀に輝く美しい体毛。

銀狼様はその琥珀色の目で、私をしかと見据えました。
「・・・何の用だ」

私は大きく息を吐くと、地に両手をつきました。
「私は齢十八、村で最も柔き肉です。我が身は酒へと浸され、より旨味を増しております。この身を銀狼様へと差し出します」
ですから、と続けようとした時、銀狼様が口を開かれました。
私は息をのんでそれを見つめました。私だけでは足りないのだろうか、私の肉では満足出来ないのだろうか、と。
しかし、銀狼様は全く別のことを仰いました。


「また被食フェチか・・・]

13/10/17 15:37更新 / 兜燐
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