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最終話

「クロ〜。準備できたよ〜」

今日でクロに会ってからちょうど一週間になった。
あれから何回か襲われたけど、その度にクロはあたしを助けてくれた。

「お、そうか。…なんかやけに早いな。もしかして楽しみに…」
「するわけない!」
「…そうか。でも、いつか楽しみになるようにしてやるからな」

そう言ってニッと笑うクロ。
言ってる事は無茶苦茶だけど、その笑顔は反則だ。


「ちょっとくすぐったいからな。我慢しろよ」

クロはそう言うと、味を確かめるように、何度も何度もあたしを舐めた。
その度に不快な水音が響くが、くすぐったいのも事実でそれを堪えるのに精一杯だった。

「ねえ…。長くない…?」

長すぎる味見に耐えかねて、もう終わらせてと視線で訴える。

「…もっと味わいたかったけど…。仕方ないな」

クロは残念そうにあたしを見た後、舌を巻きつけて、ゆっくりと口の中へと引き込んだ。
やっぱりまだ苦手だけど、クロならまだ大丈夫だと思えた。

「なぁ…。もうちょっと舐めても…」
「ダメ!」

食べられる、というのは想像以上に体力を消耗してしまう。
自分でも今叫べたのは奇跡のように感じた。

「…分かった。もう呑むからな」

そう聞こえた瞬間、クロの口内が傾き始める。
抵抗する理由も気力も無く、ただされるがままにされる。

そして、耳元でゴクン!と物を呑むような音が響く。
すると、体が窮屈な空間を無理やり押しのけて下に進んでいく。
周りからぎゅうぎゅうと圧迫されながら、クロのことを考えていた。


初めて会ったときは、正直怖かった。
でも…一緒にいて、それは間違いだって気づいた。

朝の子犬のような姿。
本当は寂しがり屋で、それを必死に隠そうとしてるとこ。
そして…あたしを恐怖から救ってくれた優しくて、カッコいいとこ。

それらが全部愛おしくて…輝いて見えた。

きっと妖怪に恋した人間なんてあたしだけだろうし、クロも受け入れてくれないだろうけど…この気持ちは本当だ。

さすがにまだ恥ずかしくて言えないけど、もっと時を重ねて、もっと思い出を作れたら、そのときにはきっと言えるはず。

だから…今は、心の中でそっとこの気持ちを温めていよう。

「いつもありがと…。大好きだよ…クロ…」

いつの間にか放り出されていた広い空間で、クロに聞こえないように小声で呟いた。
そして、一週間前と同じように、ゆっくりと目を瞑った。


真っ暗な部屋の中。
一匹の狼は、夜のような色の顔を赤らめて膨らんだ腹を見つめていた。

「くそっ…」

狼の呟いた言葉は、闇にとけて消えていった。

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という訳で完結ですw

実は、このお話、happy endかbad endで迷ってまして…。
だからとりあえずタイトルを伏せ字にして、キャラに愛着がわいたら幸せに…。
とか考えてたらわいちゃいましたw
という訳で完結ですが、いかがでしょう?
なかなか綺麗にまとめれたような気がしてますが…。
なにはともあれ、この作品を読んでくださって、ありがとうございました!

13/06/06 23:51 ラムネ

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