連載小説
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氷龍の選択肢
「これから、美衣さんはどうするの?」
氷山のふもと付近で、私とニクス、そして美衣さんがいる。氷山の頂上は少し暖かいけれど、話し声が聞こえてはいけないと思い、この辺りまで来た。
「ここは寒過ぎるから…また、別の場所を放浪していくよ。助けてくれたり、大切な物を見せてくれて、ありがとう」
美衣さんはまた頭を下げてお礼を言う。
「気にする事はないさ。それに、その木の実も結構長く持つから、邪魔でなければ持って行ってくれ」
ニクスは何個か木の実を持って、美衣さんに手渡す。
「こんなにたくさん…。でも私、何も持っていなくて…何で返したら…」
「お礼なら、君自身から貰いたいな」
ニクスが少し怪しげな笑みを浮かべて言う。食べる気満々みたい。
「え、私…?」
美衣さんは自分の立場とニクスを見て薄々気が付いているようで、私に救いの眼差しを向けてくる。
「溶かしたりしないから、頼む!」
ついに我慢できなくなったのか、ニクスは土下座までして頼んでくる。気持ちは分かるけれど…と思いながら美衣さんを見ると、少し諦めの表情を浮かべている。
「…うん、分かった…」
少し躊躇いがちに、美衣さんは木の実を置いて頷いた。途端にニクスは喜びだす。
「やった!じゃあ遠慮なく♪」
ニクスは少し体を大きくして、その大きな口で美衣さんをくわえこんだ。ジュルジュルと音が微かに聞こえてくる辺り、相当食べたかったのかもしれない。ニクスを見ると、とても嬉しそうにしている。美衣さんの体はどんどんニクスの口内におさまっていき、遂にはニクスの口が妙にもり上がっているという、なんとも奇妙な形になった。私はただ、今美衣さんがどうなっているのだろうと変な妄想をしながら(笑)、様子を眺めていた。
やがて、長い間口内で弄んでいたニクスは、ゴクリと喉を鳴らして美衣さんを呑み込んだ。
「ニクス、どうだった?」
私はなんとなく聞いてみる。
「とても美味しかった。ずっと居させたい位だ」
ニクスは微笑みながら、優しく膨れ上がったお腹を撫でていた。

それから数十分後…。
ようやく美衣さんを出して、私がしたように水分を抜いて、まるで始めからなかったかのようにまでしておいた。
「美衣さん、ありがとうな」
ニクスが笑顔で言うけれど、当の本人は複雑そうな表情をしている。無理もないけどね。
「ねえ…リウスさん…この山から、離れる事って、できない…?」
突然、思いもよらない事を言い出した。
「え?できなくはないけれど…どうして?」
「私は、まだリウスさんにお礼ができてないから…この世界を、私が旅してきた世界を、見せたいの…」
私は、ニクスの方を見る。ニクスは辺りに誰もいない事を確認して、静かに言った。
「不滅の氷は幻覚になったんだろ?だったら…別にいいんじゃないか?狙おうにも、触れる事が不可能なんだからさ。俺は一応形だけは守る為に、ここに残る。でもリウスは、どうせだし多くを見てこいよ。土産話が聞けるからな♪」
どうやら目的は土産話のようだけれど、それでもこの氷山の外の世界を見られる機会というのは、これを逃したらもうないような気がする。
「うん、分かった。それじゃ一緒にこの世界を歩こう。私がいれば、美衣さんも狙われる事がほとんどなくなるんだし。まさに一石二鳥!」
「ありがとう…あの…リウスさんの事…呼び捨てで呼んでもいいかな…?」
「もちろん!じゃあ美衣さんの事も、美衣って呼んでいい?」
「いいよ」
美衣は少し照れくさそうな顔をして言った。今まで呼ばれ慣れていないんだなぁと、ふと思った。
「たまにはこっちにも戻ってこいよ?不滅の氷とはいえ、この山から離れる期間が長すぎると、欠ける可能性があるからさ」
それは確かに。
「じゃあ何ヶ月かに一度は戻るようにするよ」
「それが一番よさそうだな。美衣もそれでいいか?」
「うん、分かった。あまり遠いところに、行ったりしないようにする…」
美衣が頷いた。

こうして、私と美衣は氷山を離れ、外の世界を旅する事になる。
だけど、決して、氷山には近付いちゃいけない。
今でも命を支える不滅の氷が氷山にはいくつかある。その不滅の氷が不滅ではなくなるまで…私達氷龍は、守り続ける。
昔から今、そして、これからも…。

THE END
14/07/16 23:03更新 / 璃蘭
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■作者メッセージ
第三者視点からの丸呑み描写って、意外と難しいですね。
まだまだ修行するべきことがたくさんありそうです。

ひとまずは終わりですが、おまけを入れるのでまだ完結はしません(笑)

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