連載小説
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不滅の氷
私達氷龍は、本能的に不滅の氷の場所が分かる。だから、その不滅の氷がある場所に向かって、ただひたすら歩いている。美衣さんもついてこれるように、私は背丈を3mほどにして、美衣さんを抱き上げた状態で。
やがて、広々とした空間に辿り着いた。ずっと舞っていた雪はいつの間にか止み、空も真っ青。雲よりもこの山が高いのだと、初めて私は分かった。
「あ、リウス。久しぶり〜♪」
ふと、奥の方から声が聞こえた。見ると、友達のニクスが私に手を振っている。雪のように真っ白ですべすべな体で、水色っぽい瞳をしている。昔はよく彼に、
「かくれんぼで雪に隠れたら、間違って踏んじゃうかも」
なんて冗談を言ったなぁ…。
「あの龍は…?」
美衣さんが少し怯えた様子で私に話しかけてくる。
「彼はニクスって言って、私の友達だよ。大丈夫、良い龍だよ」
そう言って、ニクスの方へと駆け寄った。
「あれ?その子は?」
ニクスは美衣さんに顔を近付けて、何やら気になっている様子。美衣さんは少し後ずさるようなそぶりを見せたけど、動けないからじっと大人しくしている。
「この子は美衣さんって言って、さっき遭難している所を助けたんだよ。不滅の氷を見せてあげたいんだけど…」
「あぁ、そういう事か。それなら喜んで見せようじゃないか。どうせ取られそうな感じでもないし」
ニクスは美衣さんから離れて、すたすた歩いていく。
「あの龍…なんか、ちょっと怖かった…」
美衣さんが小さく呟く。
「怖い?どうして?」
「さっき顔を近付けられた時に…なんか取って食われそうな気がして…」
「大きさのせいかなぁ…?後で言っておくよ」
私はそう言って、ニクスの後に続いた。

広々とした雪原を歩くうちに、大きな湖に差し掛かった。ここから先には、泳がなければ進めない。だけど、目的の物は、そこにあった。
「きれい…」
美衣さんが呟く。そう。それはまさに、幻想的な風景だった。



湖には大きな雪の結晶の花が咲き、その周りには粉雪が漂っている。それは本当に、言葉で言い表せないほどの美しさ。
「あの大きな雪の結晶が、不滅の氷さ」
ニクスは湖の中央にある雪の結晶を指差して言う。
「確かに…あんなにきれいなら、誰だって欲しくなるよ…」
美衣さんが、いつのまにか湖の傍まで来て、不滅の氷を見つめている。
「ちょっとリウス、いいか?」
ニクスが私に手招きしている。私は美衣さんに気付かれないよう、慎重にニクスの傍まで行く。
「なに?」
「あの子…ちょっとだけ、呑んじゃだめか?」
「どうして急に?」
「いや…さっき顔を近付けた時、ものすごく美味そうな匂いだったからさ…」
それは分かる。私も、ついあの子の体を弄んでしまった。
「だから、あれ見せた代わりにとかいってさ、な?」
「う〜ん…分かった。ちゃんと戻してよ?」
「もちろん。だってあの子は不滅の氷を持ち去る輩じゃないんだろ?なら帰さない理由はないさ」
ニクスは少し得意げな顔をして、不滅の氷をずっと見つめている美衣さんを見つめていた。
14/06/25 20:57更新 / 璃蘭
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