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第四話

「………んん……あれ?」

翌朝目が覚めると、いつも通りベッドで横になっていた。

…もしかして夢だったのかなぁ…?

まだ少し眠気が取れないまま、上半身を起こし辺りを見回す。
すると…。

「…夢じゃ無かった……」

まああんなリアルな体験が夢なわけが無く、大きな狼が気持ち良さそうに寝息を立てていた。

とても穏やかな土曜日の朝。
そんな魅力的な状況にあっさり負け、二度寝しようともう一度布団を被った。

「茜〜!ご飯よ〜!」

その瞬間を見計らったかのように、お母さんの声が響いた。

「………はーい」

布団の中の温もりにしぶしぶ別れを告げ、のろのろとベッドから這い出た。
部屋を出る際に思わず、いいなぁ、と呟いていた。

朝食を食べて部屋に戻ると、さすがにクロは目を覚ましていた。
でも朝は苦手なのか、ボーっとした目であたしを見ている。

「あ、おはよー」
「…あぁ……」

昨日の夜とは全然違う姿がまたなんかかわいかった。
もっと見ていたかったけど、そうも言ってられなかった。
半分寝ているようなクロを無視してさっさと着替え、鞄に財布やケータイ、ハンカチなどを入れてすぐに出かけられるようにする。
そして部屋を出る前にクロに一言。

「クロ〜。ちょっと友達と買い物に行って来るね〜」
「?……あぁ、分かった」

少しずつ意識がはっきりしてきたのか、さっきよりもしったりした声だった。

「じゃあ、行って来ま〜す」

そう言ってあたしは家から出て行った。


「あれ?なんか…変?」

家から出て数分経った。
ずっと歩いていたのに、周りの景色が変わってないような気がした。
試しに足元にシールを貼った十円を置いて真っ直ぐ歩く。
しばらくすると、やっぱりシールの貼られた十円に辿り着いた。
そういえば、普段から車は少ない道だけど、数十分経ってるのに一回も車が通らないのもおかしい。

少しずつ動悸が激しくなっていく。
嫌な予感がしてケータイを見ると、そこには「圏外」という文字が映っているだけだった。

まるでホラー映画のような状況だった。
そこに、さらに追い討ちをかけるように新たな異変が起きた。

目の前の空間が縮小して、真ん中が破れ黒い穴のようなものが出来た。
そこからボロボロで灰色の狐がゆっくりと出てきたのだ。

「キンキ…オンナ…ミツケタ…」

狐はそう言うと、立ち上がって、ゾンビのような遅さでこっちに向かって歩きだした。

「こ…来ないでっ…!」

この狐が妖怪なのは分かってる。
逃げなきゃいけないのも分かってる。
でも…足が動かない。
恐怖のせいで指一本すら動かせなかった。

着実に迫る人生の終わり。
狐があたしを殺す為に腕を振り上げた。

反射的に目を瞑る。
でも、何も起こらなかった。
痛みも、何もない。
恐る恐る目を開けると、目の前には黒い雲のようなもので雁字搦めにされた狐と…。

「大丈夫か? 怪我とか無いよな?」

昨日あたしを守ると言ってくれた黒い狼の姿があった。

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前の投稿からだいぶ長い間が開いてしまい、本当にすみません!
少しずつ書き溜めてたら、テスト週間に入ってしまいまして…。
でも、PCの無線が復活したので、更新速度なるべく上げて頑張りたいと思います!
これからも、応援よろしくお願いします!

13/05/25 23:45 ラムネ

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