連載小説
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遭難者との語らい
それから、獣人の者を落ち着かせるのに少し時間がかかってしまった。なんせ、気力を与えている最中だったのだから、無理もない。その人の濡れてしまった服は、私が水分を抜いたから、少し微妙な顔をしながらも着ている。
ようやく、気になる事が聞ける。
「私はリウスっていうんだけど…貴方の名前は?」
「美衣…。美しい衣って書いて、みい」
「美衣さんだね。さっきはごめん。でも、それしか救う方法がなかったんだよ」
「うん…。私こそ、ごめんね。取り乱しちゃって…」
「いいよいいよ。そりゃあ、目が覚めたらいきなり体内なんだもん。そりゃあびっくりするのもわかる」
「うん…。さっきは助けてくれて、ありがとう」
美衣さんの少しおどおどした様子で頭を下げるその仕草は、とても可愛らしい。だけどそれがかえって無抵抗を示して、狙われるのかもしれない。
「どういたしまして。ところで、なんで氷山に来ちゃったの?」
「…ここなら、誰も狙ってこないと思って…」
確かに、ここなら雪も降るから目立ちにくい。だけど…。
「ここはここで、狙われている物があるんだよね…」
「狙われている…?」
「そう。貴方と同じように、狙われている存在がここにあるんだよ。もしよければ、案内するよ?」
「本当?ありがとう。見てみたい…!」
美衣さんはぱっと表情を明るくした。美衣さんのその笑顔は、見ているこっちまでもが微笑みを浮かべたくなる不思議な力があるみたい。
「じゃあ行こっか」
私は美衣さんを片手で抱えて、守る物の場所まで歩いていった。
14/06/25 14:46更新 / 璃蘭
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