連載小説
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最中章後編 部屋は片付けると余計に散らかります〜
「どこかで見たことあるんだが知らないか?」
「知らねぇよ」
放課後、3年の教室で珍しく悩んでいる神無に話しかけると、昨日会いに行った雨月幸 最中をどこかで見たことある気がする、とのことだった。同じ学校なのだから学校ですれちがったりとかだろうと聞いてみたが
「学校で見たとかじゃなくてもっと・・・こう、なんというか・・・何かで見たというか・・・」
テレビで見たとかなら俺絶対知らないじゃないか。
「そんな事より帰ろ。先に下降りてるぞ?」
そういうと首を横に振る。
「今日は日直だから長くなりそうだ。すまないが先に帰ってくれ。」
神無は鞄から日記のような物を取りだし書き始めた。多分日誌だろう。




学校から出ていつもの通学路を通る。それだけの事なのになんとなく寂しく思えた。
「神無が居ないだけでこんなに寂しいのか・・・俺はどうやって2.3年前過ごしてたんだろうな・・・」
いつの間にか独り事も言い出した。
俺は歩を止めた。家に着いたわけではない。通学路途中の公園だ。人に会いたくなった、誰でもいい。学校を出てから人間に会っていないのだ。まるで別の世界に来たような。寂しい感情よりも怖い感情の方が大きくなってきた。公園に入ると親と子供とがワイワイと遊んでいてホッとする。すぐに帰るのも嫌だったからとりあえずブランコに座る。なんだか懐かしい。昔、誰かに背中を押してもらっていた気がする。・・・誰だっただろう?両親?いや、違う。誰だ・・・
考えている内に背中を誰かが押してくれる。触れられている感じでわかるのは俺より小さな手だ。中学生くらいの。振り向いてみると。
「やっぱり先輩です〜♪こんにちは〜」
くるくるふわふわの印象、おっとりした喋り方。
自分の一つ下の後輩。雨月幸 最中
「隣いいですか?」
「ああ、」
雨月幸は隣のブランコに座った。が
「きゃっ!?」
後ろに体重を掛けすぎてイス部分が後ろにひっくり返る。当然雨月幸もひっくり返る。
「大丈夫か?」
「うぅ〜・・・大丈夫です〜。友達によくドジって言われますけど対策のしようがないんですよ〜・・・」
パンパンと背中を払いながら雨月幸は座り直す。
「ああ!そうだ雨月幸。お前さ、テレビに出たことあるか?」
「テレビ?ないですよ〜」
「そうか。いや、神無が何かで見たことある気がするとか言ってたからさ。」
そういった途端に慌て出す。
「ええええ〜!?そ、それまさか、どっ・・・な、なんでもありませんよ〜?」
完全に目が泳いでいる。「どっ・・・」というのは気になったが、隠したい事があるのならまあ、いいか。
そろそろ帰ろうとした時。ポツ、ポツと雨が降りだした。公園にいた子供やその親も帰り出した。
「雨が降りだしたしそろそろ帰・・・どうした?」
帰ると言いたいのだが雨月幸の顔が青い。
「わ、私も帰ります〜!!ありがとうございました〜!」
雨月幸は慌てて置いてあった鞄を拾い走り出す。・・・出口とは反対の方向に
「そっち出口じゃないから!!」
雨月幸が反対方向に走っている時、転けた。その時見えたものに自分の目を疑った。ドジで転けたのではなく、足が『青い魚のヒレのようなもの』になって転けたのだ。
「あ、あれ〜?こっちじゃない・・・あ、足が!・・・」
雨月幸は太股、腰、と下から青く染まっていく。どんどん人間ではなくなっていく。
「やめて先輩・・・見ないで・・・」
下半身は大蛇のような。上半身も人間ではなく
「龍か・・・?」
龍だった。頭には鹿の様な角のある美しく綺麗な龍。その龍は起き上がった瞬間、目にも止まらぬ速さで俺の体に巻き付いた。
「雨月幸!?」
「嫌われたくないです〜・・・だから・・・ごめんなさい〜」
大きく口を開け乱暴に口の中に俺の頭を押し込む。とても甘い匂いに包まれる。
「むむぅ!むぅ・・・むむむ!」
息がしにくい。窒息寸前で頭が外に吐き出され、拘束も解かれた。その時見えたのは、一人の女性が俺に巻き付いていた龍を引き剥がしていた。知っている人。あれは誰?何か忘れてしまっているような。もう少しで思い出せる。
しかし甘い匂いを吸いすぎて意識が朦朧とする。意識が途切れる前に見たその人の表情はとても優しかった。






「まったく!なにやってんのさアンタは!神無さんにお礼言わなきゃねぇ」
母さんの声で目が覚める。
「・・・あと十分」
「仕方ないねぇ・・・アンタ熱あるんだし今日は学校休みなさい。アタシ仕事行くから」
バタンと母さんが出て行った。ボーッと何があったのか思いだす。
「・・・あ!雨月幸!」
カレンダーを見ると日付が変わっていた。神無に電話をしてみる。
「Good morning!気分はどうだい?」
「風邪ひいた。今日は学校休む。それと昨日助けてくれてサンキュ」
「助けたって言ってもボクは運んだだけさ。でもビックリしたよ。公園の端に最中ちゃんと一緒に倒れてるんだもの。」
神無は龍の雨月幸がわかったのだろうか?
「雨止んでちょっとしたら龍の姿から最中ちゃんに変わったんだよ。今日、最中ちゃんも学校休むらしい。調子悪いんだって。行ってあげるのはどうだい?」
言われなくてもそうする気だった。
「アイツの家何処だよ。知ってるか?」
「知ってるも何も明太の家の隣だろうに。まさか知らなかったのか?」
「マジ?」
「マジ」
・・・知らなかった。隣が雨月幸の家だったとは。ならますます関係を戻さねば。
「それとゴメン!君が風邪ひいたのはボクのせいだよ。公園の時、甘い匂いがしたから舐めてたら明太がベトベトになっちゃって、証拠隠滅しようと思って洗ったんだけど・・・蛇口捻ったらお湯が出るわけないじゃない?」
「出たらビックリするわ。まあ、でもそのままベッドに寝かせるよりも洗ってくれておいた方がいいから・・・サンキュ」







ピンポーン・・・
インターホンを鳴らす。マジで表札に『雨月幸』って書いてあった。
「は〜いどなたですか〜?」
インターホンから雨月幸の声が聞こえる。
「俺だ、明太だ。」
インターホンから「えっ」という声が聞こえた。
「・・・お呼びしたインターホンは只今出ることができません〜」
「電話かよ!」
ツッコミを入れるとインターホンから笑い声が聞こえた。
「俺怒ってないからさ。出てきてくれ」
しばらくの間があり扉が開いた。雨月幸の目は赤く少し腫れていた。
「ちょっと部屋を片付ける時間をください〜」
「俺は気にしないけど。」
「私は気にしちゃうんです〜!待っててください」
雨月幸が扉を閉めバタバタと走って行き頑張って掃除を・・・
ガシャーン!
「きゃ〜!」
頑張って掃除を・・・
ドーン!
「棚がぁ〜!」
掃除を・・・
バシャー!
「バケツ〜!!」
・・・
ガチャッ・・・
「あの〜・・・外で話しても良いですか〜?」
「いいよ」
その時に雨月幸は大きな溜め息を吐きながら言った
「部屋は片付けると余計に散らかります〜!」
それ片付けるって言わないんじゃないか?しかし掃除をする努力は認めよう。


「ごめんなさい」
俺は玄関先に座布団を置かれたからそれに座った。土下座された。反省の念が込められているのがとてもわかる綺麗な土下座。
「いや、そこまでしなくても・・・」
「で、でも・・・あの時変な風が吹かなければ私は本気で先輩を食べちゃってたんですよ〜!?」
変な風・・・とは多分あの人だろう。もしかしてあれは人じゃなかったのだろうか。
「変な風が吹いた時、吐き出さなきゃって意思が強くなったんです〜」
「意思が強くなったって事は吐きだそうとする意思が元々あったって事だろ?あるんならいいんだって。」
俺は雨月幸の頭を撫でる。ふわふわした髪が手に心地良い。
「えへへ〜先輩に撫でてもらえた〜♪」
「雨月幸って頭撫でられるの嫌じゃないのか?」
女の子って髪触られるの嫌なのかと思ってたが。
「え、何でですか〜?」
・・・嫌そうではない。というかさっき嬉しがってた。少し微笑みながら雨月幸は言った
「私、あの姿のせいで転校ばかりでして〜。高校生になって隠す事を必死に頑張ったんですが〜・・・やっぱり駄目でした。本当は先輩も人間じゃないって思ってたんですけど」
俺が人間じゃない?人間らしくないところなんてないと思うが
「魔力の匂いがしたんです〜。一番最初に会ったとき私、安心したんですよ〜。」
なるほど。俺に凄く近ずいていたのはそういうことか。でも何故俺から魔力の匂いが・・・あ。
「あの日は確か神無にヘッドロックされた。」
密着していたし魔力の匂いが移ることがあるかもしれない。
「ということは!もしかして〜神無先輩は人間じゃないんですか〜!?」
「ああ、吸血鬼だ」
別にコイツに隠す必要はないだろう。
「雨月幸は・・・」
「最中で良いですよ〜。」
「いや、でも」
「最中がいいな〜。」
「・・・最中」
「はい〜!なんでしょう〜?」
・・・少し可愛いとおもってしまった
「種族は?」
「青龍です〜」
えへへ・・・と何故か照れる最中。この可愛らしい少女が美しく綺麗な龍に変化するのか、変化した時の姿は最中っぽくない。神無はなんとなく面影があるのだが・・・
「それにしてもこんなに親しく人と話すのは中学生以来ですね〜」
「お前、友達いないのかよ!」
俺並みに寂しい奴じゃねぇか!
「いないわけじゃないんですよ〜。・・・中学生の頃の親友以上に話す人はいませんけどね〜・・・」
急に寂しそうな顔をしたのでビックリした。初めてなのだ、こんな顔をする最中を見るのは。
「あの女の子とは色々しましたね〜♪ゲームセンター行ったりとかカラオケ行ったりとかお風呂入ったりとか・・・」
「楽しかったんだな。」
・・・最中の話を聞いて何か本当に思い出さなければいけない事があるように思えた
ーよう来んはったなぁ♪ー
「あ!!」
「どうかしましたか〜?」
「いや・・・なんでもない」
独特の喋り方・・・俺は昔友達がいないと思っていたが違う、忘れていた。しかし、思い出せたのはそこだけ。いつ会っていつ会わなくなったのか?それが誰なのか?わからない。もうちょっとで思い出せる・・・
「先輩」
おっと、ちょっと考え事をしすぎたようだ。最中が心配そうな顔をしている。
「俺、熱あるしそろそろ帰る。明日は多分学校行けるから」
「あ、はい〜。ありがとうございました〜」
・・・家に帰ったらもうちょい考えてみるか。
15/01/06 22:43更新 / イル
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■作者メッセージ
神無「掲示板にリクエストきてた。スランプ中の元作者さんからだ」
明「ふむふむ・・・誤飲展開か、なるほど。寝ぼけてたりとかかぁ・・・」
神「こういうリクエストって皆がどういう捕食展開が好きなのかがわかって良いね!んで、イル(作者)このリクエストどうする?」
イル「むぅ・・・今のままでは書くのは難しいかなぁ。この物語を完結させられるのかも危ういし。しかも『天狗と俺』も全然内容考えてないし・・・」
明「しっかりしてくれよイル・・・」
イル「このリクエストは『個性的な友達』完結後に読みきりで出すかもしれません!」
神「まあ、あの掲示板はリク用ではなく小説内で特別章みたいなの作ってその中でイルの小説の謎を一つずつ解明していくQ&A用で作ったんだよね」
イル「うん、まあ私の掲示板の書き方が悪かったのもあると思うヨ。ごめんなさい。でもリクエストに応えれるよう頑張ります!!」

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