連載小説
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サバイバル
 「うっ、…ゴホッゴホッ!…はぁ、はぁ…。」ボタボタと血を滴らせながら、私は状況を把握しようとした。私たちが乗っていたヘリはアラガミの襲撃を受け、薄く雪の積もった大地に墜落していた。機体は大破しており、原型をとどめていないコックピット内部を確認すると、パイロットが生きている望みは絶たれた。身近な人の死は何度も経験しては来たが、どんな時も、そして今回も、単純な悲しみや自責の念がこみ上げてきた。…ズン…ズン…「…!泣いている場合じゃないね…。」大型アラガミが近づいてくる気配を察知した私は感傷に浸るのをやめ、その場を後にした。現れたのは虎型の大型アラガミ、プリティヴィ・マータだった。

 グアァァァ…ズシン。「ふう…凌いだ…。」マータが倒れて屍となった時、ヘリの残骸周辺には幾つもの赤い模様が、お互いの血によって描かれていた。食らうダメージを最小限にするため、頭脳は冷静さを保った。一方で身体は興奮状態によって傷の痛みを忘れ、言う事を素直に聞いてくれた。ところが、「…ヴッ!ヴぉッ、ゴッ…!ゲホォッ!!」緊張の糸が切れたとは、この事なのだろう。私は猛烈な吐き気に襲われ、大量の血液とともに胃の中の物を全て吐き戻した。胃液と血液の混ざった不快な味が口の中を満たす。無理やり押さえつけられていた身体が一気に悲鳴をあげ始めた。

 救援隊が現れる事の無いまま、静かな夜が訪れた。気温は急激に低下し、体温はどんどん奪われていく。重症だった箇所は応急手当をしたものの、いつまで持つか分からない。出血は止まらず、意識も朦朧とし始める。雲ひとつない夜空に散らばる美しい星と満月の明かりが、ロボを傍らにして耐え続ける私を照らし出していた。先ほどのマータ以降アラガミの気配はしないが、いずれにせよ眠ってしまえば最期だろう。
16/12/09 00:26更新 / ズィーベン
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