空腹の捕食者

ロシアのある草原でポケモンとそのオーナーが野草採りやピクニックをしていた。

そのポケモンはイーブイでオーナーのニコライからはルドゥルフと呼ばれていた。

ニコライが草原の遠くに見える海を見ながら何かを口にした。
「Расцветали яблони и груши,поплыли туманы над рекой.(リンゴが、ナシが花開き川面を霧が流れだす…)」
すると、ルドゥルフも口にした。
「Выходила на берег Катюша,на высокий берег на крутой.(高く険しい川岸に出てきたのはカチューシャ…)」
そして、彼らは可愛らしくハーモニーを奏でた。
「Выходила, песню заводила Про степного, сизого орла,Про того, которого любила,Про того, чьи письма берегла.(そぞろ歩きにたずさう歌は草原の蒼き鷲のそれは娘が愛する人、大切な手紙をくれる人)
Ой ты, песня, песенка девичья,Ты лети за ясным солнцем вслед.И бойцу на дальнем пограничье От Катюши передай привет…….(ああ歌よ、娘の歌よ飛んで行け、輝く太陽について遠き国境に立つ戦士へとカチューシャの挨拶を届けておくれ……)」
カチューシャという歌を歌い終わって彼らはお互いに顔を見合わせて微笑んだ。
「いい歌だよね、カチューシャって…」
「そうだね。」

そのとき、あるポケモンが、楽しそうに紅茶を飲む彼らの上を飛んでいき風が草花や彼らの髪を揺るがした。
カメラマンを目指しているニコライは素早くカメラを構えてシャッターを切った。
ニコライは出てきた写真を見て眉をひそめた。
「これ…なんだろう?白と赤のジェット機みたいな……」
ニコライはルドゥルフと不思議に思いながら昼食のサンドイッチを食べていた。

すると、先程の謎のポケモンが向かってきた。
「マスター、さっきのポケモンがきたよ。」
「本当だ。」
そのポケモンは彼らの頭上でスピードを緩めて急降下してきた。
ニコライは驚いて目を閉じてしまった。

トントン
「…うっ…」
何かに肩を叩かれた。
そっと目を開けると目の前には大きなポケモンの顔があった。
「うわぁ!」
「うふふ…脅かしてごめんなさい、坊や。私はラティアス。」
「は、初めまして…僕はニコライ…こっちは相棒のルドゥルフ。」
「よろしくね、坊やたち。」
ニコライは少し不審に思っていた。
さっきの写真を良く見ると、ラティアスが舌舐めずりしているように見えたからだ。
「お姉さん、サンドイッチ食べる?張り切って作ったら余っちゃって…」
「あら、美味しそうね。いただくわ。ビーツとジャガイモのサンドイッチかしら?」
「その通りだよ。」
ラティアスは一口でサンドイッチを食べた。
「美味しい。……これで、お肉があればね…」
「ごめんね、お姉さん。お肉は無いんだ…」
「え?…何言ってるの?あるじゃない……目の前に……」
ラティアスの目は屈折することなくニコライとルドゥルフを捉えていた。
「ど、どういうこと……お姉さん…」
「分からない?………じゃあ、分からせてあげるわ。」
ガシッ
「うぁ!…は、離してよ!」
「ルドゥルフ!やめてよ、ラティアスさん!」
「大丈夫よ……“中”で一緒になれるから…」
ベロリ…ぐちゃり…
「…うっ……き、きたない……」
生臭い涎がルドゥルフの顔を濡らしていく。
「美味しいお肉……いただきます。」
「やめ……」
ゴクリ
ラティアスは見せつけるようにニコライの前でルドゥルフを音を立てて呑み込んだ。
「うふふ…お友達、美味しかったわ。次はあなたの番ね。」
ニコライの顔は真っ青になっていた。
「おいで、坊や。優しく呑み込んであげる。」
「やだぁー!…」
ニコライは逃げ出そうとしたが、足がすくんで走れなかった。
ガシッ
「ふふ、捕まえた♪」
「離してよ!」
「美味しいお肉を“逃がす”と思う?」
「僕は美味しくないよ!ルドゥルフも返してよ!」
「確かに、人間の坊やもイーブイの坊やも大切な命よね。でも、私たち捕食者からしたら、あなたたちはただの……食べ物なの……」
ニコライの顔は絶望そのものだった。
ベロリ
「……んっ…やめて!…」
「美味しい〜。もっと舐めてあげるわ。」
ベロリ…ベロリ…
「ん……んん…」
ニコライは彼女の生臭い涎の臭いにやっと耐えていた。
「あなた、とっても美味しいけど…もう、お別れね。」
そういうと、彼女は口を大きく開けた。
ニコライを口内に収めると優しく噛んだ。
「痛いよ!」
彼女は優しく噛んだつもりだったが、ニコライには痛く感じたらしい。
(血の味…やり過ぎちゃったかしら…)
ごくん
「うぁ…」

ニコライは呑み込まれてしまった。
膨れた腹をさするラティアスは満足気な顔をしていた。

「うっ……臭い…」
ニコライは窮屈で酸っぱい臭いの胃の中で目を覚ました。
目の前には音と泡を立てて消化されていく相棒のルドゥルフ……
「ルドゥルフ!そんな……」
既にルドゥルフに息はなかった。
胃壁に埋もれた手を引き抜こうとしたが激痛が走って困難な状況だった。
やっとの思いで手を引き抜いたが、ニコライは息を飲んでしまった。
肘から先が溶けて切断されていたのだ。
「うそ…僕も……死んじゃう……」
そのころには胃液が胸の高さまで迫って来ていた。
全身にヒリヒリと皮膚を焼く痛みが走り泣き叫んでいた。


ラティアスは膨れた腹が戻るとケフッとゲップをして飛び去っていった。




ニコライとルドゥルフが歌ったКатюша (カチューシャ)はロシア民謡です。
感想お待ちしています。


18/02/27 16:38 Haru & José(Pepe) & Javier

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