目 次
小さな村の小さな少年の物語 - ルミナ
「うう、ん・・・こ、ここは・・・?」

気がつくと、フィーは不思議な空間に放り出されていた。
辺りは一面真っ暗で、見渡すところ黒が永遠と続いていている。
不思議なことに光の無いこの空間では、何故か自分の体をはっきりと見てとれた。

「やっぱり僕、死んじゃったのかな・・・」

どう考えても現実とは違う世界にしか思えないここは、たぶん流れからして冥府の世界かそんな所だろう。
なんとも呆気ない自分の最後を思い出しながらフィーは大きくため息をついて頭を抱えてしゃがみこんでしまった。

「僕、これからどうなるんだろう・・・ずっと一人なのは嫌だな・・・」

「待っておったぞ小僧・・・いや、フィーよ。」

「ヘっ!?ひゃあぁ!」

フィーは突然前触れもなく聞こえてきた声に思わず抱えていた頭を勢いよくあげると、ほんの目と鼻の先に見知らぬ老人が立っていた。
突如目の前に現れた老人に驚いて悲鳴をあげながらその場から飛び退きびくびくしながら老人を見据える。
すると老人は大笑いしながら「いやぁ〜、すまんすまん。」と、驚きに顔を真っ青にしたフィーになんとも気さくな声で詫びを入れた。

「カッカッカッ・・・あまりにも真剣に落ち込んでいたようじゃからついからかってみたくなっての。すまんのぉ。」

「おっ・・・おじいちゃん・・・誰?って言うかなんで僕の名前知っt・・・」

「しっかしよくもまぁ〜ワシの結界を意図も容易くすり抜けてこられたもんじゃのぉ〜!しかもこんなワッパなんぞにっ!ワシの立場も考えんかっ!」

フィーの質問には返事をする(というより聞こえていないのか?)どころかあれやこれや言いながらフィーの頭を手荒くボスボスと叩きながらなにやらフィーを物色するかの様に見回ししだした。
フィーはというと唖然として動けずにいて、ただただなすがままになっていた。

「あ、あのっ・・・・」

「すまんが小僧、ゆっくりとお前と話したいところじゃが、まずはこっちじゃ。手っ取り早く済まさせてもらうぞ。」

「・・・・っっっっっっ」

またもやスルー。いかにも怪しすぎる老人は、フィーがどうすればいいのか分からずおどおどしているのにも気にせずパニック状態のフィーの正面に立った。

「では、行くぞ・・・」

「えっ・・・?」

目の前にやって来るや老人は突然フィーの額にトン、と右手の人差し指と中指とで触れた。
その瞬間、一瞬気が遠くなる感覚を伴った後、フィーの頭の中にビジョンがその指先から直接送られてくるような感覚で流れ込んできた。

「え?何・・・これ・・・・・・・・っ!」





写し出されたのはフィーには見覚えのある空間。
フィーが初めてあのドラゴンに出会った、森の中にあった不思議な空間だ。

そこには、さっきの老人らしき人物と、あのドラゴンにとても良く似た一匹の仔竜がいて、老人が何か話しかけているようだが、フィーにはほとんど何も聞こえない。
老人は優しく微笑みながら仔竜の頭を優しく撫でているが、その目からはときおり涙が流れ、その頬に数本の線を描いていた。
それに気がついた仔竜がどうしたの?と心配した様子で老人を見上げていた。
すると老人はにっこりと微笑むと撫でるのを止めて今度は懐から何やら石のようなものを取りだし仔竜に手渡した。
それについて説明しているのか、また何か老人が話しているようだが肝心の仔竜は手渡された石を仔竜は不思議そうにつついたり舐めたりしていてほとんど聞いていないようで・・・。
話終えたらしい老人はやはり気づいていたのか、僅かに苦笑した後、立ち上がって優しく仔竜の頭に手を置いた、

               その時。

本当に一瞬の出来事だった。
老人が突如眩い光に包まれ、その姿は光に遮られてあっという間に見えなくなってしまった。
老人の姿が見えなくなる時には、老人の目から流れていた涙はいつの間にか止まっていた。
目映い閃光の中で仔竜は突然の出来事にパニックを起こしてあわてふためいているのが辛うじて見てとれた。
そして、光は少しずつ輝きを失っていき、同時に遮られていた視界も回復していったが、なぜか弱まる光の中から老人の姿はなかった。
仔竜は訳も分からず必死に辺りを見回して老人を探すが、ついに老人が再びその姿を表すことはなかった。
ビジョンがだんだんぼやけてくる。どうやらこれで終わりのようだ。


小さな仔竜がこの不思議な空間の真ん中で、大きな涙の雫をこぼしながら泣いている。フィーにはこのビジョンからの音は結局最後まで一切聴くことはできなかったが、仔竜のこの悲しげな泣き声だけはなぜか聴こえているような気がして、胸が苦しくなるのを感じていた。


「・・・お、おじいちゃんは・・一体・・・?」

ビジョンが終わり、意識がさっきいた空間に戻ってくると、震える声でビジョンでも見た不思議な老人に向かって尋ねた。

「ワシは『デイン』。あの仔竜の育ての親じゃ。あの子の親とはちょっとした知り合いでの、訳あってワシが面倒を見てきたのだが流石のワシでも年には勝てんでのぉ。」

「あ、あの子って・・・あのドラゴンさんのこと?」

「そうじゃ。お前を喰ったあのドラゴンじゃ。それにあの子にもちゃんとお前と同じように『ルミナ』と言う名前が付いとる。」

不意に気を失う前の記憶をまた思い出させられて少し気が動揺したが、それを振り払うかの様にすぐさま「そんなことよりっ」と強引に話を進めようと試みた。
ちなみに気の動揺とは裏腹に、答えてくれたことに対して内心ホっとしたのは内緒だ。

「年のせいで面倒を見るのが限界になったのは辛いことだけどまだ理解出来るけど、なんでわざわざあんなところにしかもたった一匹で・・・」

突如、さっきまで目の前にいて微笑みかけてくれていた唯一無二の親を失い、それからの孤独の苦しみをたった一匹でルミナは乗り越えて何年もの間今まで生きて来たのかと思うと、思わず自分や兄と重ねて見てしまい、同情の年が込み上げてきた。
もしかすると、未だにこの老人が帰ってくることを信じて待ち続けているのかも知れない。
フィーも親を小さい頃に不慮の事故で無くしており、その悲しみを兄のライズを支えに今まで乗り越えて生きてきた。そういう事もあって、どうしてもこれだけは知っておきたかった。

老人はふぅ、と一つため息をついたと思ったらうっすらと笑みを浮かべると今度はすぐに真剣な面立ちになった。

「ワシがいなくなる時には、もはや残された手段はこれしかなかったんじゃ。」

「・・・。」

「そもそもドラゴンはとても希少な生き物じゃ。それだけあってそのドラゴンを金目当てに狙ってくる輩も数えきれんほどいてのぉ・・・。しかもルミナは特別じゃ。」

一瞬デインの表情に影が指したように暗くなった。

「ルミナはその中でも特に希少な種にあたる『神竜』の末裔で『月光竜』と言うものにあたる聖竜なのじゃ。その身には永遠に枯渇することのない魔力が宿っており、そしてその生き血を飲んだ者は、『永遠の命』を得るのだと言う。これが何を意味するのかお前のようなワッパにも分かるだろう?」

思わずフィーはゴクリと生唾を飲んだ。個人的な過去から出した質問が、これほど大きなスケールで帰ってくるなんて思いもいなかった。
『永遠の命』・・・そんなものなんかが誰かに知れたらすぐさまルミナの命が危険にさらされるに決まっている。それどころか、ルミナをめぐって人間同士での争いも起こりかねない。
もしそうなったらと思うとゾッと背中から一気に悪寒が広がっていった。

「も、もしかして今帝国が僕の村へ来たのも・・・」

「伝説を知った権力に溺れた王か王族の愚か者が永遠の命、もとい永遠の権力欲しさに攻めてきたようじゃの。」

「そんな・・・じゃっ、じゃあ僕、大変な事しちゃったんじゃ・・・」

         『ねぇ、ドラゴンさん!僕を外まで連れていって!』

自分が言ったその一言がフィーの頭の中を駆け巡る。
その一言のせいで、ルミナの命を危険にさらし、それどころか、自分が住む村への危機をより加速させてしまったのではないのだろうか。思わず頭の髪の毛をぐしゃぐしゃにしてその場にしゃがみこんでしまう。自責の念が、みるみるフィーの心を飲み込んでいく。

「大丈夫。」

デインはしゃがみこんでいたフィーの肩に手を置き、耳元でそう呟いた。フィーはハッと涙目になっていた顔を上げた。それと同時に、デインの体が光を宿し始めた。

「お前は選ばれたのだ。ルミナを何年も続いた孤独から解き放てるのは、お前だけじゃ。」

「でも、なんで僕なんかが・・・」

「お前はルミナの為に涙を流せる、よき理解者であり、よきパートナーとなるであろう。この先、きっと辛い戦いになると思うが、必ずやルミナが力になってくれる。その時はお前も、ルミナを守ってやっておくれ・・・」

「・・・。」

デインの輝きは時間と共に強さをましていき、ついに目視できなくなってしまった。まるで、さっきのビジョンの子竜だったルミナと入れ替わった様な感覚だ。

「これでお別れの様じゃな・・・。」

「そんな・・・!おじいちゃん!僕は・・・僕はどうすれば・・・!」

「大丈夫じゃよ。お前ならきっとその答えを見つけられるはずじゃ。それにいつでもワシはお前達を見守っておる。娘を・・・頼んだぞ・・・」













「うっ・・・?」

「クルルッ♪」

「うわぁぁっ!」

ゴンッ

「へぶっ!」

現実の世界に引き戻されたフィーは、何が何だか分からない状態で目を冷ましてまず目に入ったのが巨大なルミナの鼻面だった。もはやフィーの視界はルミナの体毛の色で染まっていた。
あまりにも急な展開にパニックになった拍子に思いきりルミナの顔に顔をぶつけてしまい、そのまま後ろに倒れ込んだが、暖かい羽布団のように柔らかいルミナの腹が受け止めてくれた。
どうやらフィーは、地面に寝そべっていたルミナの腹を背もたれにする様な形で寝ていたらしく、ルミナは首をねじ曲げてそんなフィーを心配そうに覗き込んでいたようだ。
ルミナの体液でベトベトだった体は、ルミナが舐めて清めてくれたらしい。服もいつの間にか乾いていた。

「〜〜〜ッ!!!」

ルミナには大した痛みはなかった様だがフィーは鼻を強打したらしく涙目になっていた。
あれ、前もこんなことあった様な気が・・・
痛みに耐えながら悶えるフィーを見てルミナが心配そうに鳴くと、それに気づいたフィーは大丈夫。と、まだ涙目だったが笑って見せた。
すると、ルミナは直ぐ様甘え声をたてながらフィーの手に己の頬をすり付けた。
例の如く、なかなかじゃれつくのを止めないルミナに少し困りながら、ふと、自分のポケットのなかに何か入っている事に気がついた。
ポケットに手を突っ込んでそれを取り出して見ると、何やら石のようなもので、不思議な模様が所々に描かれていた。どうやらルミナの腹の中で見つけたものらしい。
その石は、不思議な温もりを持っていて、心が安らかになるのが分かった。
そして、夢の中で最後に聞いたデインの声を思い出した。

「ねぇ、ルミナ・・・」

久しぶりに呼ばれた自分の名を聞いたルミナの動きがぴったりと止まる。
驚きが隠せない様で、固まったまま目を見開いていた。

「いつでも僕はお前のそばにいて、お前を守る。だから・・・うわっ!」

急にルミナが立ち上がり、突然背もたれを無くしたフィーは後ろにひっくり返ってしまった。
仰向けになってルミナを見上げると、彼女はその巨体故の大きな翼を広げ、満月が輝く大空へ向かって高らかに鳴いた。

「・・・ハハッ」

月光に照らされた体毛は白銀に輝き、大きく広げた翼は、星々が散らばる夜空のようだった。
寛大に広がる大空に響く声は、歓喜に満ち溢れていた。
どうも、ご無沙汰してます。

ちょくちょく書いてはいたんですがその度に書いた文章を操作ミスで消し飛ばすこと2、3回orz

自分で心に傷を付けて萎えていたら、気づけば年が暮れていました。

お陰で文は設定安定しないし何書いてんだか自分でも把握できていません。

ドジでどうしようもないヘタレですいません。

もう次はなるべく早く投稿しますとか言いません。てか、言えません。(殴
[14/02/25 21:56 カイル]
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