連載小説
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誰かに奪われる前に
「何だか今日・・・夢予、上の空だよな。何かあったのか?」
3年1組のとある生徒が夢予を心配する。3年1組、ティラミスと夢予のクラスだ。
彼が心配するのも無理はない。いつも笑顔でしっかりとしている夢予がボーッとした顔で歩いて壁にぶつかったり壁に向かって独り言を言うのだ。おまけに今日の授業中急に。
「そんな!あなたにそんな人が居たなんて知らなかった!」
と急に叫びだす。その後保健室に連れていかれたが。
キーンコンーンカーンコー・・・
学校から解放される祝福の音。その音が終わる前に思いきり扉が開き夢予が全速で走る
「夢予!廊下を走るなぁ!」
生徒会長が生徒に言われるのもおかしいが今おかしいのはそれではない。本人がおかしいのだ。
「今日、今日言うの!絶対!」
自分にそう言い聞かせると階段をかけ上って行った。




「ハァ…ハァ…もう生徒会長居るかな?」
今日は急いだつもりだが2年生のクラスは一階。3年生は3階で2階の階段が少しだけ長いのだ。いつもならゆっくりと上がるのだが今日は急がなければならない。
「今日しかチャンスは無いんだよね・・・」
急いでパタパタと階段をかけ上がる。つまずきそうになっても止まらない。告白のチャンスはまだ今日丸一日ある。でも言えるのは心に決めたその時だけ。勇気のある今しかないのだ
ギギイッ・・・
少し錆びて開きにくい屋上の扉を開ける。と、そこにはいつもの生徒会長がいた。
「あ、ああ・・・契君いらっしゃい♪」
いつもの心からの笑顔ではないのが明らかにわかる。
「えっと・・・来ないほうが・・・良かったですか?」
「そ、そんなことないよ!そんなことないけど・・・」
・・・と数分沈黙が続く。沈黙が続くと怪しまれると思った二人は
「「あのっ!」」
同時だった。一気に二人共告白の勇気がしぼむ。しかし勇気が先に戻ったのは
「先に言わせてもらいます生徒会長!」
契だった。とても深く、大きな深呼吸をする。そして
「僕はっ・・・生徒会長が・・・その・・・先輩としてではなくですね・・・女性として・・・好きです。」
目を合わせなかった契が夢予を見ると、固まっていた。まるで夢予の魂が抜けてしまったように。ハッと夢予の魂が戻り目が瞬きをした
「その・・・後輩がこんなことおかしいとは思ったんですが伝えたくて・・・ごめんなさい。でも、今までの関係を崩したくないです・・・」
その言葉を最後まで聞いた夢予の表情は・・・契が見たことが無いほど真剣な顔で強い眼差しだった。そして、制服のポケットに手を入れ何か探しながら契に近づいた。
「動かないでジッとしててね。」
夢予の表情がすこし和らいだ。見つけたのかポケットから手を出し契の首に何かを巻き始める。
革のような何かそしてその革のような何かの先に夢予の手が触れるとチリチリンと心の中が透き通るような鈴の音がする。契からは何を着けているか見えない。見えるのは夢予の少し微笑んだ顔。それと夢予の苺のような甘い春の香り。
「できた。ちょっと待ってねアタシも着けるから。」
そうして夢予は自分にも着ける。慣れた手つき。よく着けているのだろう。契に着けるよりも早かった。
「・・・首輪?」
着けている物は一緒だろう。夢予が首に着けた物はオシャレな首輪のような物。先には鈴が付いている。
「フフッ・・・違うよ♪チョウカーっていうオシャレなアクセサリー♪いくよっ?」
夢予は自分の両手を合わせ握り締める。お祈りみたいな感じだ。そんなことを契が思っていると
『一緒だね♪私も今日言おうとしたんだよーっ。先に言われちゃったのは悔しいけどね。付き合っちゃお!カレカノになるって事。いい?』
このチョウカーは念話を可能にする物のようだ。頭に声が響く
出そうになる涙を堪えて声を絞る。
「はぃ・・・ぉ願ぃします」
二人で安心した溜め息を吐く
「ねえ、アタシが今してほしい事をやってみて。ヒントはね、今まで不安だったよ?断られたりしたらどうしようって」
恐らくヒントがなくても分かっていた。そうする気だった。
ギュゥッ・・・
優しく力強く夢予の背中に手を回し抱き締めた。
「・・・ウウッ・・・せいかっ…い。ヒグゥ」
夢予も契の背中に手を回す。尻尾が契をホワッと温かく包み込む。
「ほんと…にっ、いいの?アタシ妖怪だよっ?狐の尻尾や狐の耳とか狐火も出るよ?人間を食べたこともあるよ?もしかしたら…契君の事も食べるかもよ?」
契は背中に回した手にもっと力をいれる。
「大丈夫です。尻尾も耳も狐火も関係無いです。・・・夢予先輩は僕を食べる事なんてしないですよ。食べるとしてもちゃんと許可をとるでしょうし。それに消化しないでしょう」
「契君はアタシの事を分かってくれてるんだねぇ!そうだ、明日デートしない?付き合ってから初めての♪」
「はい!明日は学校も無く・・・・・!!そういう事かぁ!ティラミスお姉ちゃん・・・」
と、契は納得した。告白に期限を付けた理由が分かったのだ。
「・・・?まあ、いいや。明日の9:30に喫茶店[霧の家]に集合だよっ♪それじゃあねっ♪」
とチョウカーの鈴をチリチリ鳴らし走って行った。走っていく時耳がピコピコ動くのが可愛い。



「上手くいったみたいだな。契。」
家に帰ると契がティラミスと一緒に寝ている寝室に居るティラミスに声をかけられる
「うん!ありがとう!ティラミスお姉ちゃん♪」
契がティラミスに抱き付くと、ティラミスは契が可愛すぎて昇天しそうになるが意識が戻る。
「はい、コレっ。[霧の家]のコーヒー一杯無料の券2枚!」
と2枚小さな券を渡されるが
「えっ!?いやっ!大丈夫だよっ?お姉ちゃんが彼氏と行くために残しときなよぉ!」
一瞬表情が曇るが直ぐに戻る。
「ウチは・・・いいんだよ。それより良いチョウカーもらったじゃないか。大切にしろよ?まあ魔力が宿っているから簡単には切れないし無くさないがな」
そういいながら明日の契の着替えに券を入れる。
「券を貰ったお礼に今日は僕がご飯を作るよ!」
と台所に走って行った。そんな契を見てティラミスは
「・・・彼が生きてたら券はウチが使ってたよ」
そうポツリと呟いてベットの上で伸びをした。


「痛ぁぁ!足つった!」
14/05/22 01:03更新 / イル
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■作者メッセージ
朝起きた時とか疲れた時の夜に伸びをすると足つることってありませんか?

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