とある双子
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- バラライカの怒り -

バラライカは直属の部下達と共に事件現場のバーに赴いていた。

窓ガラスは全て粉々になり、空薬莢が散乱し、血塗れとなった床や壁の部分の血液は凝固していた。

バラライカは血の鉄臭い建物の中に入り中を見回した。

チッ

舌打ちをして外に出ると、葉巻を咥えて火をつけた。


そこに警察署からジュンサーが来ていた。

「ご苦労様。」

「あぁ…」

「防犯カメラの映像があるわ。見てみたけど、犯人は子供ね。双子よ。まるで喪服みたいな服装だったわ。シャイニングみたいで薄気味悪い。彼らがこの店を襲ったのは朝4時くらいね。あと、これ。彼らがバーテンに差し出した名刺よ…貴方の。貴方の部下のうち1人を車に乗せると、動く者がいなくなるまで車乗射撃を食らわせた…酷いわ。」

「その車の車種、及びナンバーは?」

「黒いセダン、日本車ってことはね。でもナンバーは分からないわ。あと、それから…双子は白人だけど英語圏じゃない…変わった言葉で挨拶していたわね…そう、“ブナ、セアラ”あと互いを呼ぶときはこう言うみたい。“フラッティマイソール”、“セアラマイマーレ”って…」

「ジュンサー、この件を中央へは漏らすな。治安部に介入されると厄介だ。」
バラライカはキッとジュンサーの目を睨んだ。

「わかってる。私もこの町は好きだもの。あ、そうだ!バラライカ、警官にも賞金は出るのよね?」

バラライカは彼女にうっすらと笑みを見せると車に乗り込んだ。

「不愉快な奴だ。ヘドが出る。しかし、酷い失態だ。2人組で行動させておけば私の兵がやられることはないと思い込んでいた。」

「サハロフ達は気を突かれたんですよ、大尉殿。まさか死角が子供だとは…」

「パンジシールを思い出せ。敵の半分は子供だった…魂にも脂肪がつくものだ。我々の魂にもな。」

バラライカはフーっと煙を吐いた。

「その通りであります、大尉殿。以後、引き締めます。」

「同士軍曹、これ以上の戦力低下は好ましくない。捜索班は我々の隊以外から組織しろ。捨て駒として使え。」

「はい。」

「あの共同墓地から戦死はこれで8名…何人死なせても馴染めはせん。」

「あの誓いの日以来、戦死は覚悟の上であります。サハロフ上等兵も同じことを言うでしょう。」

「もう殺らせはせん、軍曹。同士サハロフの命はガキどもの血で償わせてもらう。憎悪を込めて殺してやる…」

彼女は窓の外を眺めた。


事務所へ戻った逃し屋のボスゴドラは雨に濡れた身体を拭いていた。

新聞を読んでいたレヴィは顔を上げた。

「どうだい?もう誰かに吊されちまったか?」

「いいや…台風なんてもんじゃねー。バラライカはヴィソトニキを動かすことを考えてるよ。」

「姉御のバカ…町をひっくり返すつもりかよ…」

「ヴィソトニキ?何それ?」

「遊撃隊、連中のイヴァン語でヴィソトニキ…ホテルモスクワ以来の姉御の子飼いの部下たちのことさ…」

「ホテルモスクワ……サーナイト、ポケモンである彼女を頭脳として全員が1つのキリーングマシーン(殺人マシーン)として機能する第三次世界大戦を戦えるだけの訓練を受けた、百戦錬磨のアフガン帰還兵達…か…」

「他のヤクザと違うのはそこさ。考察が取れてて容赦がねぇ。」

「“あれ”が本気で怒っている間は近づきたくはないな…少なくとも半径200マイル以内には…」

そう言ってボスゴドラは缶ビールを飲み干した。
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