連載小説
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異変
カレー屋から出るとアイツはすぐ近くのコンビニに入った。奴はトイレを借りている間、俺はタバコを買っていた。アイツがトイレから出てくると、げっそりとしていることに気がついた。
「激辛なんか食うからだ。」
「そうだね。」
駅に向かって歩いていると、柄の悪い数人の男が1人のか弱そうな男を囲み荒々しく言い合っていた。内容は金関係らしかった。
その男たちを通り過ぎた後、改札前で俺たちは止まった。
「この後どうするんだ。」
「僕、バイトあるから。タクミは?」
「今日は非番だ。」
「じゃあ、また明日ね。」
「おう、明日な。」
アイツは改札を出ず俺を見送った。

その日の夜、ラジオでは謎の正義の味方が取り上げられていた。
『男性を救った何者かはまさにヒーローですね。』
『確かにそうかもしれませんが、人を殺めてしまうのは行き過ぎではないでしょうか?』
トーク中、その謎の正義の味方の肯定と否定を議論していた。その日から、ヒーローの話題はテレビでも見るようになった。

翌朝、大学の食堂で朝食をとっていると離れた所にアイツの姿が見えた。奴は一足早く食べ終え、トイレに向かっていた。俺も食べ終わり、1限目の授業へ向かおうとしていた。
「やあ、おはよう、タクミ。」
「ん、おはよう。」
奴の手が俺の肩に乗っていた。
「行こうか。」

そして昼休み、アイツはもう使われなくなり取り壊し予定の廃校舎から出てきた。俺はそれを見ていないふりをして奴に振る舞った。
「お前って、オカルト好きか?」
「結構好きだよ。」
「なら明日、あの廃校舎へ行ってみないか?」
「いや、あそこへは行きたくないんだ。」
「何でだ?」
「廃校舎だし、危なそうだからだよ。」
「そうか。代わりに、明日ホラー映画でも見るか?」
「いいね。」

その夜、俺は居酒屋のバイト終わりに駅に向かっていると、後ろから服を掴まれた。
「こいつだ。こいつがあのゾロアークと一緒にいたガキだ。」
「何すんだ?はなせ!」
俺を掴んでいた男は、何日か前にすれ違った柄の悪い連中のうちの1人だった。その顔には新しい切り傷があった。その男は俺を裏路地へ引きずっていき、大きな黒い影の前でその手を離した。
「こいつだ。」
街灯の光がやや差し込み、その大きな影の正体がわかった。それは大きなカイリュー だった。
そのカイリュー は俺の顔を見てニヤリと笑うと、俺を持ち上げ自分の顔へ近づけた。
「貴様のダチは俺の仲間を随分といたぶってくれたようじゃねえか?」
「俺のダチ?」
「そうだ。貴様のダチのゾロアークだ。」
「何かの間違いだろ?大体、アイツあの日はバイトだって言ってたぞ。」
「お前を見送った後俺たちは襲われたんだよ。」
俺を引きずった男がそう言った。
「アイツが人を襲う訳がねぇ。」
「まあいい、そのダチを呼んでもらおうか。」
「断ったら?」
「貴様を食い殺してやる。」
ポケットからスマホが奪われ、ロックが解除されようとしていた。
「クソッ、パスコードを教えろ。」
「032617」
「入れた。」
カイリュー にきつく拘束されていたため、俺はもう肋骨が痛くてしょうがなかった。
「もういいだろう?」
「ああ…そうだな。」
しかし、締め付けは余計にきつくなった。
「へへへ、顔を見られたからには生きて返す訳ないだろう?」
そのカイリュー は舌舐めずりをし、ベロリと俺の顔をひと舐めすると、生臭くベトベトした口の中へ俺の体を収めた。口が閉じられて呑み込まれる直前、スマホにメールが送信された音がした。ズルズルと真っ暗な食道を落ちていき、悪臭が立ち込む少し広い空間に落ちた。直感で胃袋だと気づいた。
21/03/14 03:44更新 / Haru & José(Pepe) & Javier
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