合わせ鏡 Part2

*流血描写に注意

「なぁ、レポートキツくないか?」
「言えてる。期限は一ヶ月後だけど、内容が難しいから書けるかどうか…」

僕と友人の家で彼とスペイン語の歴史いわゆるスペイン語史のレポートを考えていた。

数時間後、大体のアイデアが集まり構文が出来てきた。気づけば、深夜1時を過ぎていた。
「どうする、ハル?1時過ぎだし、泊まって行くか?」
「いいの?」
「ああ。寝袋とベッドどっちがいい?」
「寝袋でいいよ。」


友人はあることを思いついたようだった。
「そうだ…合わせ鏡やらないか?」
「合わせ鏡⁉…止めた方がいいと思うけど。」
「いいや。やるさ。」

友人が大きな鏡を向かい合わせている間に、僕はトイレを借りた。
『なんだよ、まだ帰って来ないのか?』
トイレの鏡から声が聞こえた。
「ホヌ?」
『そうだ。…で、何時に帰って来るんだ?』
「今日は泊まるんだよ。」
僕にある考えが浮かんだ。
「友達が合わせ鏡やろうとしてるんだけど……出てきてくれる?」
『いいぜ。そいつの命を貰っていいのか?』
「それはダメ。楽しませるんじゃなくて、怖がらせてほしいんだ。もう、こんなことしないように。」
『分かった。9割方本気でやるからな。バクとユキにも言っとくぞ。あと、お前もそれっぽくやれよ?』
「分かった。ありがとう。」


深夜2時を過ぎたとき、僕たちは向かい合わさった鏡をあたかも睨むかのように見ていた。
友人はうとうとしていた。
彼が下を向いた瞬間、僕は鏡に向かって合図した。

「おい、人間…起きるんだ!」
「うわぁ!」
友人はびっくりして声が枯れんばかりに大声を上げた。
「な、何でボーマンダとバクフーンがここに⁉」
「なぜ、私たちをここに呼んだの?」
僕も驚いて怖がっているような顔をしてた。

「質問に答えてくれるかしら?」
「えっと…興味本位であ、合わせ鏡をやったんです。」
「うふふ、興味本位ですって?」
白と灰色の体毛の大きなバクフーンは僕の目の前に立ち、僕を見下ろしていた。僕は彼女を見上げていた。
「私たち何だと思う?」
「ポケモン…か?」
「見た目はそうかもしれないが……俺たちは悪魔だ。」
「あ、悪魔⁉」
「そうだ。その証拠に…」
別のバクフーンの姿をした悪魔は手を振ると、机の上の全てのファイルが持ち上がり地面に散らばった。
バリンッ
友人のすぐ後ろの窓ガラスが粉々に割れた。
ボーマンダの姿の悪魔はニヤリと笑った。
「どうした、怖くなったか?」
友人の顔は引きつっていた。

しかし、次の瞬間友人は開いていたクローゼットから鞘から抜けた長めの模造刀を取り出し、ボーマンダの姿の悪魔の頭に振り下ろした。全員が呆気に取られていると、白と灰色の体毛の悪魔を斬りつけた。部屋は飛び散った赤い血で汚れ、鉄臭い嫌な匂いに包まれた。
「それで殺したつもりか?」
「何⁉」
気づけば、彼らの身体はとっくに元どおりになっていた。
バクリッ

ボーマンダの姿の悪魔は友人を咥え込んだ。友人は脚をバタバタと動かしていた。
「んん…!」
彼の口の中で友人が抵抗しているのは容易に想像できた。
ごくり

とうとう、友人はその悪魔に呑み込まれてしまった。




数分後
「こんな感じでいいんだよな、ハル?」
「うん…」
「こいつ、怖がったと思うか?」
ボーマンダの姿の悪魔:ホヌは僕に不思議そうに尋ねた。
「たぶん。」
「あなたみたいに食べられるのが好きだったりして?」
「僕は…ベ、別に…食べられるのが好きってわけじゃないよ。」
僕は白と灰色の体毛の悪魔:ユキを睨んだ。
ベロリ、ベロリ…
「うぇ…ちょっと!」
「へへへ、こうやって俺に舐めまわされるのが好きなんだよな?」
白と真っ黒な体毛の悪魔:バクは僕を自分の方に抱き寄せて、僕の顔を舐めていた。
生臭い涎がとても気持ち悪かった。
「なぁ、お前の友人はホヌに喰われちまったから、お前を喰っていいか?」
「え?」
「いいよなぁ?」
「しょうがない…いいよ。」

バクは僕の上半身を口の中に収めると、意地悪く臭い舌の汚れや唾液を押し付けた。
「やめて…」
ごくりと音がして、僕は自分の体が彼の胃に落ちていくのを感じた。

食べられるのは嫌だけど、なぜかバクのお腹の中は安心する。
僕は目を閉じた。



「起きろ、ハル。」
バクは吐き出してくれたようだ。
「これで、元どおりだ。」
割れたガラスも床に散らばった書類もそして友人も元どおりになっていた。


朝6時、僕は友人の寝言で目を覚ました。
「や、やめろ…」
まだ魘されているんだと思ったが、それは予想もしない魘され方だった。
「もっと、舐めてくれよ…味がしなくなるまで…」

おそらく、友人は食べられるのが好きなのかもしれない。


その日から友人はよくバクやユキ、ホヌに食べられたいと言うようになった。








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