友達は捕食者? Part2

ある朝、僕が歯を磨いていると外から車が止まる音が聞こえた。

ピンポーンとインターホンが鳴り、外に出て見るとそこにいたのはバンさんだった。
「おはよう、ハルくん。」
「おはよう、バンさん。どうしたの?」

バンさんの後ろには彼の黒いアルファードが止まっていて、トランクが開いていた。
「僕の隣に引っ越しするの、バンさん?」
「いや、俺じゃないよ。彼女さ。」
指差した先には荷物を運んでいるちょっとぽっちゃりしたラティアスの姿があった。
「あいつ、俺の後輩なんだ。でも、後輩って言ってもハルくんの5歳上だよ。」
「聞こえてますよ。私の情報勝手に流さないで下さい、部長。」
「ごめん、ごめん。」
荷物を降ろし、ふぅと一息して手で仰ぎながらこっちに向かってきた。
「はぁ〜、暑い…」
そして、僕とバンさんの間に割って入った。
「私ラティアスのティア。よろしくね。」
「僕はハルです。大学でスペイン語を学んでいます。」
「部長から聞いてる。私も同じ学科だったのよ。」
「じゃあ、先輩ですか。」
「そうなるわね。スペイン、楽しかった?」
「はい、とても。」
「私も今年の2月までバルセロナに出張してたの。」

僕たちはお互いの思い出話をしてすっかり仲良くなった。
「荷物運び手伝いましょうか?」
「いいの?助かるわ。」
バンさんと僕は彼女の荷物を部屋に運んだ。


1時間後、荷物運びが終わり休憩した。
「ハルくん。敬語はもう使わないで。」
「分かった。使わないよ。」


バンさんが帰り、僕は夕食の支度を始めようとしていた。そのとき、ピンポーンとインターホンが鳴った。
「はーい。」
出ると、ティアさんがいた。
「一緒にスーパー行かない?」
「え…いいよ。」

近くのスーパーまで歩いて行き、食材を買った。
「ねぇ、ハルくん。」
「何?」
「夕食、何食べたい?」
「えっ?」
「今日手伝ってくれたから御馳走したくて。」
「アヒージョがいい…かな。」

それから、具材を買って帰った。
ティアさんの玄関にはスリッパが置かれていた。


「良かった、家具付きだし、今日から水ガス電気が使えて。」
ティアさんはスイッチやコンロをいじって確かめていた。
「ハルくんは休んでていいよ。」
「ありがとう、ティアさん。」

しばらくすると、オリーブオイルとニンニクの香りがしてきた。
「はい、お待たせ。」
パンといっしょにサラダとアヒージョを食べた。
「ティアさん、料理上手いね。」
「うふふ、ありがとう。バルセロナにいたときも1人だったから、料理の腕も上がったのね。」
食べながら、こんな量でティアさんは足りるのだろうかという疑問が浮かんだ。
「ティアさん、足りる?」
「どうして?」
「だって…ゴルディータ(ぽっちゃり)だから…」
「そんなこと言うなら食べちゃうわよ。でも、うーん、足りないかも。」
ティアさんの目じっと僕を捉えていた。
「ゴルディータって言ってごめんなさい。」
「だめ。」
ベロリ
大きな赤い舌が僕の頬をなぞり、特有の生臭さが鼻をついた。
「う……臭い…」
「失礼ね。そんなこと言うなら、もっと舐めちゃうわよ。」
ティアさんは僕をがっしり捕まえると抱きしめて舐め回し始めた。
「うう…やめて…」
しかしそれを止めるどころか、シャツの間に舌が入り込み少し汗ばんだ僕の肌を強く舌でなぞっていた。
「美味しい。」

舐め回しが終わると僕の顔を口の中に収め、意地悪気に強く舐め回した。
「じゃあ、呑み込むわね。」
ごくりという音とともに僕は呑み込まれ、胃へと案内された。


うとうとし始めたとき、外に吐き出された。


時刻は深夜2時を回っていた。
「どうする?泊まっていく?」
僕は部屋が隣だし、帰ろうかと思ったが帰ったところで悪魔に食べられることは分かっていた。それに、ティアさんは泊まっていって欲しそうな顔をしていた。
「じゃ、泊まろうかな。」
「たっぷり舐めてあげる。」
「やっぱり帰っていい?」
「冗談よ。」


僕はシャワー浴びて寝巻きに着替えた。
「ハルくん、ベッドで寝る?」
「いいの?」
「もちろん。」
「ありがとう、ティアさん。」


僕はベッドに先に横になった。
すると、ギュッと体が何かに押し付けられた。驚いて後ろを見るとティアさんが僕を抱きしめていた。彼女のぷにぷにしてぽっちゃりな体が僕の体を受け止めていた。最初は暑いから離れてと言おうとしたが、その逆で冷んやりとしていて気持ち良かった。
「冷んやりするでしょ?」
「うん、気持ち良いよ。」
ティアさんは電気を消した。
「おやすみ、ティアさん。」
「おやすみ、ハルくん。」



翌朝、目を覚ますと生臭い嫌な臭いが充満したベタベタした空間で目を覚ました。手を動かすと、あることに気づいた。
「僕の頭を咥えながら寝てるの?」
「おひたの(起きたの)?」
大きな舌が寝起きの僕の顔を強く舐めた。
「だ、出して…」

ベトベトになった顔を洗い終わると、ティアさんはフレンチトーストを作ってくれていた。
「はい、朝食よ。」
「いただきます。」
それはとても美味しかった。


「ティアさん、ありがとう。」
「こちらこそ。泊まっていってくれてありがとう、ハルくん。またいつでも泊まりに来てね。」
そこにはペロリと舌舐めずりするティアさんの顔があった。


Fin

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