空腹の捕食者 Part2

ここはとある貧民街


“仕事”をしてきたダヴィは、裏路地に入ると手に持ったハンドバッグを開けた。その中にはスマホから財布、パスポートまで入っていた。

果たして、裏路地で兄弟と暮らすボロボロの服を着た少年が高級ブランドのハンドバッグを持っているだろうか?
その日ダヴィはその金で弟のジョゼの分の夕飯を買った。


翌日、ダヴィは拳銃をズボンのポケットに入れ通りへ向かった。
ダヴィは路地の入り口から通りを見張り、バイクに黒髪の女性が乗り込むのを見計らってその女性に拳銃を向けた。
「バイクをよこせ!」
しかし、女性は全く驚いてはいなかった。さらに、ヘルメットを外すとバイクを降りてダヴィの方へ近づいてきた。
ダヴィは違和感を覚え、構えていたリボルバーのハンマーを起こした。
「何だよ?」

その女性はふふふっという声でニヤリと笑った。

「ふふ、美味しそう…」
すると、女性の体が光り人間の姿からポケモンの姿になった。その体はダヴィよりも大きかった。

ダヴィは異常な気味悪さを感じ急いで来た道を引き返したが、気づかぬうちに路地の先に荷物が置かれ行き止まりとなってしまった。
拳銃で反撃しようにも、脅すのが目的であったため弾などは入っていなかった。

「一か八か…」
そう呟くと、ダヴィは積まれた荷物に手をかけ登ろうとした。

その時、両脚を何かに掴まれ引きずり下ろされてしまった。
「ダメじゃない逃げちゃ。」
彼の両脚を掴んでいたのはそのポケモンだった。
「は、はなせ!」
「誰がせっかく捕まえた獲物を逃すと思うの?」
“獲物”という言葉に恐怖を感じ自分の立場が認めたくないほど嫌なものであることに気づかされた。
「ちょうど追いかけっこでお腹が空いていたところだったのよ。」

彼女はすっかり腰が抜けてしまったダヴィの顔を真っ赤な舌でベロリと舐め上げた。
「うぇっ…臭っ…」
舌と涎の形容しがたい生臭さがダヴィをより一層苦しめ、より恐怖に陥れていた。
「その怖がってる顔も、味も癖になりそうだわ。でも、もうお腹が限界だから食べちゃうわね。お腹中で好きなだけ暴れていいわよ。」
彼女は大きく口を開けてダヴィを丸呑みにした。彼女の腹はぐにょぐにょと動いていた。

「ごめんな、ジョゼ…」
そう言うと、ダヴィは爛れた手にペンダントを握り締めたまま目を閉じた。

「うっ…」
ダヴィを食べたそのポケモンは何かを吐き出した。それはダヴィの着けていたペンダントだった。


すっかり暗くなった通りに小さな男の子裏路地からが出てきた。
「ダヴィ兄さーん!ダヴィ兄さーん!」
その子を彼女は見逃さなかった。というのも、ペンダントの中の子供と全く同じだったからだ。それを彼女はポケモンの姿から人間の姿に変えると、その子に近づいた。
「ねぇ、坊や。こんな時間に誰を探してるの?」
「僕の兄さんを探してるんだ。」
「じゃあ、私が一緒に探してあげよか?」
「いいの?ありがとう。」
その子は安堵し笑みをこぼした。

「坊や、名前は?」
「ジョゼ。お姉さんは?」
「マリアよ。」

そこで、ジョゼはそのペンダントを見つけ拾い上げた。それは、ベタベタしていて嫌な臭いがしていた。
「これ…ダヴィ兄さんのだ…」

さらに、ベトッ、ベトッとしたものがジョゼの頭に垂れた。
「うぇっ…なんだこれ?」
上を見上げると、そこにはポケモンの顔があった。ニヤリと笑いかけたその顔はとても不気味だった。
ガシッ
「うふふ、捕まえた。」
そのポケモンは背後からジョゼをがっしりと拘束していた。
「マ、マリア…?ポケモンだったの?」
「そうよ。ちなみに、今の私の名前はラティアス。」
「ラティアス…僕、もう帰るよ。朝には兄さんが帰ってくるかもしれない。」
「…私…ダヴィの居場所を知ってるわ。」
「え?本当?連れてってよ、僕を!」
「本当にいいのね。」

ラティアスはじゅるりと音を立てて舌舐めずりをすると、ジョゼの上半身を咥え込んだ。ジョゼは激しく抵抗したが、ラティアスの舐め回しと味見は終わらなかった。
数十分後、ジョゼはラティアスの口から唾液の糸を引かせながら出された。
「うぇ…やめてよ!臭いし苦しいよ!」
「美味しいわ。うふふ、本当のことを言うと…ダヴィは…私が食べたのよ。」
ジョゼは言葉では言い表せない感情に涙を流した。

「じゃあ、ダヴィと仲良くね。」
そう言って、ラティアスはジョゼを一気に呑み込んだ。


摩っていた膨らんだ腹が元に戻るとラティアスは自分の姿を人間に変え、バイクにまたがりその場を去った。


次はこの空腹の捕食者はどこに現れるだろうか。

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