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“死”をどう見るか

僕はあのレシラムに食べられたはずだった。


目を開けると、そこは揺れてる空間だった。もっと言うと、車の中だった。
「よう、散々だったな。」
運転手は逃した研究員だった。
「あら、やっと起きたのね。」
聞き覚えのある声がして、後部座席を見るとそこはユキとバクがいた。そして、一番後ろの席には色白の肌の背の高い男の人が座っていた。

車は開けた場所に止まり、みんな降りた。

「あの…あなたは…?」
僕はその男の人に声をかけた。
「君は僕のこと知っていると思ったけどなぁ…」
その声に聞き覚えがあった。
「レシラムさん…」
「当たり。」
そして、運転していた研究員の声にも聞き覚えがあった。
「じゃあ、俺は誰か分かるか?」
「もしかして…ホヌ?」
「当たりだ。あーあ、お前があのレシラムから逃げ切ったら食ってやろうと思ってたのによ。ちなみに、あのレシラムの“役”は今お前の隣にいるやつじゃないぜ。ユキがその“役”をやってたんだ。」
「だからあんなに……」
「あんなに……何?」
「何でもないよ。」

腕時計に目をやると午後4時だった。
夕焼けが4体の悪魔の姿をオレンジ色に輝かせていた。
「ところで、僕たちがなぜ君をあの研究所に連れてきたか分かるかい?」
「いや…分からない。ずっとバクが僕をいじめているのかと思ってたよ。」
「おい!俺はいつも優しいだろう。」
「じゃあ、君は今レポート作成に悩んでるみたいだね?バクたちから聞いたよ。」
「“死”について書くレポートだよ。なかなかいいアイデアが浮かばないんだ。」
「でも、今はどうだい?少し近づいたかい?」
「どうだろう…」
「ハル、君はさっきの研究所でどの立場にいたんだい?殺す側?殺される側?それとも両方?」
「両方だった…」
「そうだよね。君は殺す側でもあり殺される側…食べられる側でもあった。じゃあ、どっちの方が怖かった?殺す時?それとも殺される時?」
「殺される時。」
「不安だったかい?…自分はどうなってしまうんだろうって?」
「すごく不安だったよ。」
「普通はみんなそうさ。想像してみてよ…もし今ここで僕が君を何も言わずにいきなり食べてしまったら…君は不安を感じずにいられるかい?」
「たぶん…不安を感じると思う。」
「それはなぜだろうね?」
「信頼かな…生かすも消化するもレシラムさん次第だから。バクたちはしないと思う。僕はレシラムさんを100%信頼してるってわけじゃないんだ。嫌いって意味じゃないよ。」
「大丈夫。今ので少し簡単になったかい?」
「なんとなく、どう書けばいいか分かった気がする。」
「じゃ、僕からも君に同じ課題を出すよ。次会うときまでに考えといてくれるかい?」
「もちろん。」
「ありがとう。じゃあ、みんなまた会う日まで。」

そう言ってレシラムさんは去っていった。

「俺たちも戻るか?」
バクが僕の肩に手を置いていた。
「そうだね、バク。」
「なぁ、戻ったらお前を食ってもいいか?」
「いいよ、ホヌ。」
「本当に私怖かった?」
「トラウマレベルだったよ、ユキ。」




眩い光の後、僕たちは元の世界に戻っていた。

fin

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