連載小説
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不滅の氷を守る為に
数十分後、ようやく満足したのか、美衣さんは私達の方へと戻ってきた。
「見せてくれて、ありがとう!」
美衣さんはとても明るい表情で、頭を下げる。呑むのに胸を高鳴らせていたニクスは、言うタイミングに困って少し苦笑を浮かべている。
「だけど、どうしてこれを守らなきゃいけないの?」
美衣さんは、大体予想はしていた質問をした。私はニクスと顔を見合わせる。ニクスは微かに頷いて、美衣さんに語りだした。
「この不滅の氷は、僕達の命の結晶のような物なんだ。だから、何があっても誰かに取られる訳にはいかない」
「じゃあ…水の底に埋めるとかは?」
「そんな事をしたら、私達が溺れちゃうよ。だから、こうして水面に浮かべたまま、守っていかなきゃならないんだよ」
私の言葉で、美衣さんは黙り込んでしまう。と、その時…。
「じゃあ…魂と繋げてしまえばいいんじゃない?」
突然美衣さんが、別人にでもなってしまったかのように急に落ち着いた様子で言い出した。
「魂を…繋げる?」
「そう。そうすればあの結晶は形だけで、本質は魂に宿る。分かりやすく言えば、木に宿っている魂を抜いて、ただの木にしてしまうような感じね」
「…美衣さん、一体どうしちゃったんだ?」
ニクスが少し不安げに尋ねる。美衣さん(?)はいたって冷静に答えた。
「私は美衣…というか、正確には美衣の裏の人格と言ったところね。どうしても表の方が、どうにか救う方法はないかって悩んでいたみたいだから」
「それで、魂を繋げる方法は?」
「簡単よ。ちょっと待ってね…」
美衣さん(?)は不意に掌を合わせて目を閉じると、何かを呟いた。それは私達には通じない言葉だったけれど、とても神秘的で歌っているようだった。
その瞬間、私は体が急に重くなって、何か温かい物が胸の内に宿るのを感じた。これが…魂を繋げるって事…?
「こんなところかしら。これで、あの結晶は形だけのものになったわ。誰も触れられない、幻覚にね」
美衣さん(?)が微笑む。
「君は一体…」
ニクスが不思議そうな表情で尋ねる。
「詩で想いを伝える民の末裔…と言えば、分かるかしら?まぁ、あくまでも私がそうなだけで、美衣がそうかといえば、何とも言えないわ」
美衣さん(?)がそう言うと…また、いつものおどおどした様子の美衣さんに戻ったみたい。

その後、その事を美衣さんに聞いたけれど、何も覚えていない上に、裏の人格の存在すら知らなかった。
14/07/02 19:33更新 / 璃蘭
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■作者メッセージ
更新が遅くなりすみません。あの時は活火山状態だったネタも、今や休火山になってしまいました。
後2つか3つくらいは続きそうです。

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