連載小説
[TOP] [目次]
少女と一つの島
ここは、この世界のどこかにある小さな島。

そこには一般の家に生まれた少女がいた。

その少女は大人しい性格で、あまり外に出たがらない。

名前はマリアという。

学校で本を読んだりするのだが、大半がクジラについての本。

少女は海に棲むクジラにかなり興味を持っていた。

本を読み進めるにつれて、段々とある感情が湧き上がってきた。

「クジラに食べられたい」

クジラがどんな生き物なのかは本を読んでよく知っているつもりだ。

海に行けばクジラに会えるかもしれない…と思った。

その翌日、早速海に向かうことにした。

幸いにも海と家はそんなに離れていなかったのだ。

波の音だけが聞こえてくる静かな浜辺。

少女はワクワクしていた。

この海の何処かにクジラさんがいるんだと思うと胸が高鳴る。

しかし、少女は海を泳げない。

このままではクジラを見つけられないと思っていたら…

突然、目の前に大きなクジラが現れた。

「…え」

喜びよりもまず驚きが先に来た。

当然だ、いきなり目の前に巨大なクジラが出たのだから。

「ふぅ…久しぶりにこの島に来たなぁ」

そしてクジラがいきなり喋りだしたため、二度びっくり。

「あ、あの…」

「おや、君は誰かな?」

クジラは真っ黒な目を少女に向けた。

なんでクジラがこんなところに来たのかとか、なんでしゃべることができるのかとか…。

聞きたいことは山ほどあるが…。

まずは自己紹介からということで、自分の名前を名乗った。

「マリア…ね」

名前を覚えるためなのか、何回かその名前を反芻するように繰り返すと…

「うん、覚えたよ」

クジラはそう言うと嬉しそうに微笑んだ。

その後‥

「えっ、僕に食べられたいって?」

自分の正直な気持ちを彼に話すと、驚かれた。

いきなり食べてほしいなんていったんだから、当然であろう。

「お願い…本でしか読んだことがないから」

マリアは必死にお願いをした。

この気持をどうしてもクジラに伝えたかったのだ。

「いいけど…無事に出られるかはわからないよ。それでもいいんだね?」

最終確認をするかのようにそういうクジラ。

少女もうんとうなずいた。

「そう…そんなに僕に食べられたいと言うなら…」

するとクジラは大きな口を開け、口の中を少女に見せつける。

「さぁおいでよ。待ってるからさ」

少女は意を決したようにうなずくと、ゆっくりと進んでいく。

口の中は予想通りジメジメしている。

本で書かれていたとおりの光景に、マリアは興奮を隠せない。

クジラの喉の奥を見ると真っ暗で何も見えなかった。

ピンク色の鮮やかな肉の洞窟が広がっているのがわずかながら見える。

少女は少し怖くなった。

今ならまだ引き返せるかも‥なんて思いながら後ろを振り返る。

しかし頑張って先に進むことにした。

ここど引き返してしまっては折角のチャンスが台無しになってしまうかもしれないと思ったからだ。

もうあとには引っ返せないな…と思いつつ、先へ進むことにした。



18/10/28 20:01更新 / ラルス
戻る 次へ

TOP | 感想 | RSS

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35b