読切小説
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とある食事風景
なんということでしょう、

風の噂では小屋の外にあのけちん棒な歩く猿共らが向日葵の種をどっさり置いていったと聞くではありませんか。
それで一番手前の壁穴を通り越そうとした所です。

やはり先に一番乗りになっていたのがあの太っちょですよ、あの太っちょ。
「食べ物」が捨てられるすぐ近くの床底に陣取っちゃってるあの欲張りなずるいネズミのことですよ。
まぁ私も皆で分け合おうなんて思ってないので…
こんなことを言い触らすのは良くないですが、それはそれとしてね。
その欲張りさんがですね…どうしたことか…

今まさに食べられかけているのですよ。

何を言っているのか分からないとは思いますが巨大なトカゲの様な何かに捕まえられているのです。私共の体など足元にも及ばない様な大きさなのですよ。

お腹だけを見るとまるで大蛇のような蛇腹のうねりがみえるのですが、明らかに違いますね。あれはヘビ以上ですな。

わたくしは今まで猿共に散々色んな所を追いやられて転々としてきましたが、あんなばかでかいトカゲ?ヘビ?…は見たことありません。ありゃ化け物ですよ、化け物。どんな鳥でもつけていないような骨と皮だけの翼に手足に犬のような鋭い爪がありました。鼻先に角?っぽい何かが生えておりまして、口の中にキラキラと光る鋭い牙の数々…うう思い出すだけで身震いしてきました。
あいつは尻尾を捕まれ、ネズミが猫に弄ばれる時の様にして何やら言葉責めにされておりました。

一体何を吹き込まれたのか太っちょの奴は何故か暴れなくなっちゃいましてね。それからぱくりと頭から半分を入れられて…初めは尻尾や足をジタバタさせていたのが、時に痙攣した後の様にだらりと垂れてしまいました。尻尾がフニャッと反応しておりましたから、生きているとは思います。が、突然チュルッとね、麺を啜る様に口の中に吸い込まれていきました。…中で何が起こっているんでしょうか…。

楽しげに目を閉じてカエデの形をした両手をもぐもぐと口に宛がってしっかりと噛み締める様子はまるで初めてチーズをかじる子ネズミによく似てるんですが、口端から滲み出ているのが涎じゃなく紛れもなく赤い血なので…しかも器用にピンク色の舌でそれを残らず口の中に舐め取るんですから。恐ろしくて恐ろしくて目が離せないんです。顎の下からお腹までがゆっくりと波打ち、ネズミの形をしたいびつな膨らみが落ちてゆくのを遂に今この目で最後までみてしまいました。それまでをわたくしは飼い犬よろしくお座り状態で見上げているので御座いますがね、やばいですなこれは…。
生きたまま喰われた太っちょの気持ちを考えると…
ああ怖い怖い、こんな恐ろしい所にはいられん。
うわっどうしましょう…目が合ってしまいました。まだ食べ足りないみたいです…うう。やっぱ怖いです。
まだ逃げられますね…大丈夫、あっちはでかいのですから。壁穴さえ抜ければこんな…あれ?

あれあれ…どうしたのでしょうこんな時に。床に罠とかありましたっけ…?
ネズミ捕りに引っ掛かった時みたいに足が進まないのですが…え…ちょっちょっとおおっ!
えっえっいったい何が起こっているのです!?

ああーっ床が離れていく、真っ逆さまに吊り下げられ…え、まさかわたくし…もう…


「やったぁ!もう一匹みつけた!」

後ろを振り向きたくないのですが、あっ…お尻になんか熱々の吐息がかけられてっうう太っちょも抵抗できないわけですよ。こんな誘惑をかけられて…ううっ…何だか息づかいが荒いですとかげ様。…あうっひいいっそこっそこっ舐めちゃ…いやああああっー!



ああう…一旦落ち着きましょう。しかしさっきからも…うう、しっぽが…ぐちゅぐちゅ…って舐められて…ううっ変な気持ちです…恥ずかしくて死にそうです…。

…多分もうすぐ口の中ですよね…はう…やばいです…どうしたらいいんでしょう…この昂った心持ち…ああうどうしましょう。絶対絶命のピンチ、わたくしおもいっきり舌の上に乗せられてしまいました。もう既に全身唾液漬けですよ。
なんなんでしょうかね…いや別に感じては、いませんよ…ふさふさの体毛がすっかりぬらされちゃってぐしょぐしょになってます。お腹の下でですね…えらくずっちょんずっちょん舐めてくるんですよ。
もうそのヌメヌメした何かがでろんでろんに舐めてきて。あう…やばいもうしゃべりきれません。体がひっくり返されてはまた押し戻されて…うっ…ばちゃってさっき口に想いっきり接吻されました。いや違います、なめられちゃったんです
…口の中に含んでみるとぬるぬるして中途半端に暖かくて思ってた位に生臭くなくて…ああどうしましょう頭がおかしくなりそうです。うう…もっと嗅ぎたい。食べられてるんですよ…舐められてるんですよ…自分で言うのもなんですけど今さっき怖がってた自分は何処に行ったんでしょう?
もう激しくてね…それでいて優しくてね…気持ちいいんです。
今まで土くれや藁の中で過ごした中でこんなに心地いい寝床があったっけ〜なんて思っちゃったりして、ちょっと硬くて凶暴ですけど、びしょ濡れになってますけど…つがいの懐みたいに暖かくて気持ちよくて抱きつきたい位大きくて…うう〜
そんなことを思ってる間にわたしすっかり身をまかせちゃってたんです…もうすっかり飴みたいにでろんでろんにされちゃいました。体毛ちょっと擦っただけで掌に透明な泥々がどっさり出てきます。
あ…そうこうしてる間に足元が誰かに捕まえられてしまいました。なんかもっと熱い奥へ…どんどん引き摺られていくぅ…もう息が荒くて…もう首をうごかすだけでも一苦労です。…捕まえられてたのは誰かの手じゃありませんでした。…喉肉…とでも言えばよいのでしょうか…
気づいた時にはもう腕から下までが飲み込まれて、先ほどの桃色の舌とは大違いな毒々しく脈打つ肉口に取り込まれていました。口の奥だからでしょうが真っ暗でなにも見えません。ただ脇の下全部がつっかえたように動かないというか、熱いのりか何かでくっ付けられている様に固く強く捕まえられているのです。

アオヘビにとぐろを巻かれてたべられそうになった時以来です。こんなに苦しいの、やばい、やばい、本当に息が止まりそう…うう、いっそここで…、いやここで諦めちゃったら二度と出られない!!
うう…がんばれわたし!

べっちゃり
…舌肉しゃんの奇襲再来。あっという間に上半身に巻き付いて締め上げられて…成す術無く私は…。

      ☆
             ☆
                   ★

――――――――――――――…………

………気がついたら出られなくなっていました。手足の先があるのか無いのかぐちょぐちょになってて、尻尾が自分の尻尾が見えません。背中がじんじん熱くて耳元でヌチョヌチョと何かがごそごそ泥の中で動いている様な不気味な音がします。お腹にはなにも触れていなくて熱い空気に晒されて暖炉の上の鍋の中で寝そべっているみたいに熱いです。
頭がぼうっとしてきて眠たい…。
……うっまた尻尾が舐められてる。あぁ…あれ熱いっなぁ…
背中がじりじり焼ける様に熱い…あ。私の手が―――――――――――――…………









(巣中にて)


「ぎゃっ!やめてえぇーっ!!」
表面に赤い肉片がこびりついた牙が目と鼻の先に…。嫌でも吸ってしまう熱くて湿ったい吐息が肺に入って反芻してくる。ああ口の中が甘酸っぱい…。
うっすらと見えた口の中でぬらぬらとしたまあるい舌の先がじっくりと唾液の中に浸って、こちらに這いずる様な動きを見せた。
あんな所に放り込まれたらどうなってしまうンだろう。

体が震えて止まらないボクを上から下までじいっと見つめて離さない目が例えようもなく怖い。

平然と僕を隅から隅まで見つめてどう食べようかなあなんて小声で呟きながら時折じゅるりと涎を啜るのは嫌がらせなの…?
そんなに怖がらせたいの?

「あれぇ?君の毛並み…飴玉みたいにつやつやしてる…ふふっ美味しそう。」

危なっかしく目の前で牙が上下する。

思わず叫んでしまいこの牙の間に挟まれたらと考えると反射的に、手足が縮こまる。


怖い。助けて…。


『〜〜ッ…!!!!!?』
「ん〜まだ生きてるみたい」
突然の降下に思わず手足が浮き上がり目が見開いた。

不意に押さえつけられた腹の奥からは、
今までに聞いたことの無い程恐ろしい隣人の泣き言がくぐもった呻きになって聞こえてきた。
「ああぁっ…こんな…ひいっ!?」

…せめて食われる前には聞きたくなかった。

目を押さえて眠りたい…。でも、それさえ…させてくれないのが現実だった。

目の黒い部分がいつの間にか蛇みたいに割れていた。純粋に僕を食べ物と捉えて離さない、僕だけに向けられた鋭い視線が僕の心を掴んでしまった。
目の前のそれは、僕の味が確かめたくて仕方がない様で…ブワッと熱い吐息が酸っぱい唾液の匂いを含んで被さって来た。

…目を開けてじっとりと顔が濡れたのが分かった時には、見えていた世界が変わってしまっている感じがした。
聞いた筈だよね…僕はこの目で同じねずみが竜に生きたまま喰われる苦しみの声を…

今、嬉々として僕を見つめるどす黒くて邪悪な好奇心にまみれた竜の顔が…あるじゃないか…。

なのに…なのに…



あったかくて…良い。

ぶにぶにとした柔らかい竜の手のひらの中が急にあったかくなって…特等席に座っているような気分にさせてくれるんだ…。

どうしようと焦っているんじゃなく、どうしようもなく好きな女の子ねずみに会った時のどぎまぎも混じった興奮なん…だけどね。

今から食べ…られるのに、なんでこんなに興奮するのか…な?


そういえば…初めてだっけ、こんなの…。

飴玉みたいに舐められて…力一杯に抱きすくめられて…身体中痛め付けられて…あげくの果てに、食べられそうになってる。こんなにも僕のことを…
味わって…受け入れてくれる…


これも…運命だったりするのかな…?
なんて…考えたりもしてしまうほど僕は無邪気で幼くて残酷な竜の眩しい瞳に目が釘付けになって離れない。


や…やだ…口から引いている透明な唾液の糸がぬめっと出てきてだらりと伸びる。…誘われてるみたい…。
冷たい二つの爪先で軽く摘ままれたボクのおなか。
あの生臭くて何もかもがぐちゃぐちゃの泥々な口の中に飛び込んだら…僕は向日葵の種みたいにぼろぼろに噛み砕かれて…いやその前に舐め転がされてもっと痛め付けられて…ごくりと呑み込まれるんだろう。僕の体でぐにゃりと波打ちそうな目の前の滑らかでプニュプニュとした喉の皮膜。今もぬらりぬらりと金色に光を放つすらりとした喉…の中。どうなってるんだろう…?案外気持ちよかったり…

うう…ぞくぞくする…
でも今から食べられるって言うのは…多少っ勇気がいるよね…っ

無意識に力が抜けて、体がじわじわと重くなるのを感じた。

やめて…見ないで…食べられたくなんか…ううっ

そんなにやにやとした目で見つめないでよぉ…

イ…イヤ…食べ…//

「いただきまあ…すっ♪」
くぱぁっ♪…――――――



15/05/27 17:37更新 / みずのもと
■作者メッセージ
ふとした夢で書いたものです。子ドラゴンに食べられる夢が見たいんです。
ここまで読んでくれた人がいたら有難うと言いたいですw(^O^)アリガトウ
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2015/03/23/0404 追記
2015/03/23/1048 追記
2015/03/30/0325 追記
2015/05/27/1710 追記

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竜の喉を真下から眺めてみたいなあ…
もっと水飴みたいに蕩けるまで舐められる様な甘い竜voreがいいな…



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