連載小説
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夢を見る魔女
「リッカはさ、卒業したらどうするの?やっぱり錬金学校だからそっちの道?」
私の問い掛けにリッカは釜の中をゆっくりとかき混ぜながら横に首を振る
「未定ですわ、そちらはどうなさいますの?」
「私は・・・なんとなく推薦受けてなんとなく居るだけだからさ、でも錬金術関係の仕事をすると思う。私には多分、それしかないから」
私の返答にリッカはフラスコを回していた手を止める。そして私の方に振り返りニッと笑う
「じゃあ私、それを手伝います!だって私、ベルちゃんの事が大好きですもの♪」



「リッ・・・カ」
気付くと儂は天井に手を伸ばしていた。どうやら夢を見ていたようじゃ
「し、師匠?大丈夫ですか?」
隣には心配そうに覗くピコの姿があった。
「すみません。師匠の部屋に勝手に入ってはいけないとは思っていましたが外まで聞こえる程魘されていたので・・・あれ、何か落ちてます」
ピコはその場にしゃがみ儂のベッドの下に転がっている箱を
「!!待て!!絶対触るな!!」
彼女の指が箱に触れるか触れないかの所でビクッと停止する。魔法を使った訳ではない。ただ、儂の剣幕に驚いただけ。じゃが本人もビックリである。こんな大声を出したのはこの姿では初めてじゃ。こんな大声が出るとは。
「・・・すまぬ。しかし本当に大事な物なのじゃ。儂が持っている何よりも大切なものでな。もう、失いたくないからな・・・」
小さな箱をそっと拾い上げて優しく抱き締める。
「いえ・・・こちらこそすみません。大切な物とは知らずに触ろうとした私が悪いんですし。朝御飯できてるので食べれるようなら・・・来てくださいね」
そう言ってすぐにピコは儂の部屋から出ていってしまった。悪い事をしてしもうたな・・・
手が震える。体が熱い。
「い、いかん!こんな顔してるとピコを心配させてしまう!」
いや、もうさせてる訳じゃが
らしくなく動揺してしもうた、さて朝御飯じゃ




「・・・ 」
カチャカチャ
「・・・」
き、きまずいのじゃ!
「ピ、ピコよ・・・何か喋らぬか?」
「ご飯美味しいですか?」
「うむ、この目玉焼き、絶妙な半熟加減じゃ!」
「そうですか」
・・・会話が終了してしもうた。疑問形で返せばもう少しぐらい続いておったかのう・・・
しかし、数分後ピコは完食してないにも関わらず箸を休める。
「師匠」
「な、なんじゃ」
まさか弟子辞めるとか言わんじゃろうな・・・いや、別に困りもせぬが
何を言われるか色々考えたがピコの疑問は儂が考えた物に何一つ一致せんかった。
「あの箱の中身って・・・なんですか?」
恐る恐る、といった感じでピコは聞いてきた。
まあ、別に隠す事でもない。見られたってなんとも思わぬか、寝起きで気が立っておっただけじゃし。
ちょっと待っておれ、とピコに言い自分の部屋からさっきの箱を持ち出してきた。
「すまなかったのう。ちょうどこれを貰った友人の夢を見とっての、というか寝起きじゃったし・・・のう」
「いえ、別に大丈夫ですよ。それで中身は?」
中身・・・か、久しぶりに見るのう。ずっと傍に置いておったというのに・・・
ゆっくりと箱を開く。その中身は『あの時』と同じ輝きを放っていた。
「指輪・・・ですか?見たこともない宝石・・・」
紅の中に秘められた黒。まるで血のような色合いをした宝石がリングの上に飾られている。
「錬金術師なら誰もが目指す伝説の石『賢者の石』名前ぐらいは聞いたことあるじゃろう?卑金属を金へと変化させるだけでなく、どんな病気も、傷も癒す万能物質。」
儂はすぐに蓋を閉じ懐に入れた。いかんいかん、色々思い出してしまう。
「それって師匠とリッカさんが創った物なんですか?」
なぜピコがリッカの事を知っておる・・・と思ったがそうか、寝言でリッカの名前を呼んだのか
「いや、儂は創っておらぬ。『リッカ』と『ベルベット』が創った物じゃ」
リコリス学園始まってからの最高錬金術師と言われておったわ。言われる度に2人して嫌そうな顔をしておったな。
「ごちそうさま。さて、そろそろ出掛けるか。お主も連れてゆくぞ」
食べ終えた後の食器をそのままにして儂はカゴを持つ。中には布や紙、鉱石などが入っておる
「?珍しいですね、どこに行くんですか」
儂の分まで皿を洗いながらピコは聞く。多分あまり良い顔はしないのじゃろう
「キュベレ王国じゃ」
パリン!
皿を落とした音が聞こえた
18/10/20 22:58更新 / イル
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