連載小説
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獲物は大切に...


少しグロ注意!


≫≫≫≫

どらごんさんの口と口の間を運ばれた時、物凄く怖くて…ぎざぎざの歯の間をすり抜ける時は噛み砕かれると思って怖くてつい声が出ちゃったけど、気づいてなかったみたい。
こっちのどらごんさんの口の方が大きくて、とても広くて暗くて…泣きそうになった。
…どらごんさんの二つの舌が体に巻き付いた時はどうしようも出来なくなってた…。
どらごんさんの涎が口の中に入っちゃってて…その瞬間口の中が息ができないくらいねばついて、手も足も動かせなくて…どうしようって心の中で叫んでた。
頭がくらくらして…急に眠くなって…

…そしたらいつの間にか真っ暗になって変な所に押し込められちゃった。
底無しの落とし穴みたいに…壁をつこうとしたら壁の中を手が突き抜けてコンニャクを掴んだようなぐちゅぐちゅとした感触がした。最後まで落ちたくなくて、手を出すと今度はつるりと滑ってまっ逆さまになっちゃったんだ。
最後まで落ちて頭から柔らかな何かに突っ込んだ。
残りの足もずるっと抜け落ちて、少し広い空間の底に沈むと、自分でも気づかないくらいはぁはぁしてた。
サウナみたいな熱気が立ち込める中で体がきつくしばられているみたい…。
何重にも敷き詰められた布団の中で必死にもがいてるような心細さ。
布団は力を入れたらほんの少しでも隙間は空くけど、今はどれだけ力を入れてもぬるぬるつやつやの天井はびくともしなかった。
意思に反してズブズブ体が沈んでいくのが分かる。
この柔らかい何かはぬるぬるした水でべちょべちょになっているけど…なんか温かくて気持ち悪くはない。
「うぶっ!?」
突然天井が迫って来て全てが体に密着する。
何故かもう天井は下の何かみたいに柔らかくなっていて、いやそれ以上にぐちょんぐちょんで全身頬擦りされてるようなくっつき方。もう考えてるヒマも無かった。
揺りかごのように僕の周りが揺れ始めて、肉みたいな何かは全身を擦り浸き始めた…。
グショ…グショ…ニュチュウ…クチュ…グチュ…
≫≫≫≫

はぁ…




あれ?
…いまおもったんだけど、ここってどらごんさんのお腹の中…なの?













消化液が分泌する音もしない。肉が激しく締め付けてくる感触もない。
ただ何重にも重ねられた肉布団の隙間に自分一人だけが居る。
子供の心にある恐怖心が芽生える。
――寂しい。
なにも聞こえない。
遠い…遠すぎて寂しい。
もし、この、無理矢理体を押し込めば入れるような小さい隙間をどれくらい抜ければ…、外に出られるんだろう?
まるで冷たい洞窟の中に一人で迷い込んだような気分だった。
「誰か…いないの…?」
子供は背中をもたれて、淋しそうに呟いた。
肉壁が少し凹んだ。





―――朝。
朝が来た。食い千切られたような形を成す岩山の稜線が銀色に煌めく。
洞窟の外から見えた星空を白くぼやけた背景が紅茶に溶け込むミルクのようにさあっと隠した。

目角の上半分を瞼で覆いながら腕の短い四本指の掌一杯に腹をさする…。
さも満足げに先牙の奥から生臭く湿った吐息を洩らしながら…。


一定した心臓の拍動の中で小さく木霊する心臓を持つ子供はその生き急ぐような激しさと速さから、まだ意識を保っていることが分かる。
よりいっそう支配感が高まりまた腹の上から胃袋をかき回したくなる…。
ぐぐ……グニュウゥ…
ほんの少し腹を押すだけで膨らみが蠢くのが癖になってしまっていた。

「はぁ……♪」

村で成人2、3人喰ったせいか食欲もしばらく湧かず
ただ思わず右腕で自分の腹の様子を探りつつ首を後ろに回したまま、
岩壁に向かって小さく喘ぐ。




…しかし、本当に良かった。
危なかった…。
もしこんなところをあいつに見られたら…
「おはようっ!」
「うわっ…!!」











まさに寝耳に水だ。
メガホンみたく突発な“おはよう”を繰り出し、腹の上に覆い被さってきた弟に驚き、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
待ちきれないとばかりに弟が蛇腹の膨らみに頬擦りして訊いてくる。

「兄さん、もう良いよね…、返してもらっても…。」
「うぅ…そうだな。」

「出来れば口移しで…」

「…え?」

「ねっ、…いいよね?」

「あ…ああ……そうだな。」

いつもと違った弟の様子に戸惑わざるを得ず、俺は思わず、魂の抜けかかったような低い返事をした。

「んぐ……」



朝起きたばかりで、口の中に溜まった唾液が上顎と舌の間でべったりねばついて離れないのが音で分かる。気分が良いものではないが仕方ない。
息を止めて目をしかと閉じるとウッウッと小さく唸りつつ食道の入り口―噴門辺り―に引き寄せ、そこから一気に食道を上らせ口を開き――――


「むぐっ!?」

≫≫≫≫

子供の膨らみが腹から食道に移ったのを確認すると、開きかけた兄さんの口を
思わずくわえ込んだ。
一時に血生臭さが漂ってきたが、すぐに慣れた。
それよりも誰の血の匂いなのだろうかと不安になる。

―――バシャッ!!

食道を膨らみが登り終えた瞬間兄さんの目が見開いて、僕と兄さんの牙の間に吐き出した物が引っ掛かった。それといっしょに兄さんの胃袋から捻り出された僅かな飛沫が口の中に広がり、なんとも言えない苦味が広がる。
同時に口吻の先にくわえた状態の子供の胴体からまだ熱が残った兄さんの唾液を舐めとる。
実際には自分の唾液と兄さんのが混じり合っただけで子供の体はもっとぐしゃぐしゃになるだけなのだが。


≫≫≫≫
「むぐうぅっ…」

開きかけた口にかぶりつくように口を重ねてきた弟に対し、驚きを隠せずつい呻いてしまった。

まだ幼げな生暖かく臭みのない湿った吐息が口の中に広がってきた。

喉に異物感が伝わり、多量の透明な液体と一緒に子供を吐き出すと、下半分が自分の口の中に残り、留まってしまった。
弟の目線が少し苛立つような、焦らすような目付きに達すると、思わず目線を反らした。
ぴちゃぴちゃと水音を立てながら催促を始める弟。
気がつくと刺さっていた子供の体から自分の牙を離すと、少しずつたじろいで口を離した。

ひょいっと上を向き、ワニのように直角に口を開くと、重力で落ちた肉の塊が弟の口の中に消えた。
淡々と目を閉じて口の中をモゴモゴさせながら味見をすると、にんまりと笑みを浮かべながら、そのままゴクッと小気味の良い音を立てた。

兄のように掌を当てて獲物の温もりを確かめるとそのまま優しく擦った。
邪気の無い笑みを浮かべながら、

「よかったぁ…ちゃんとまだ生きてた…。」

そう呟くと外の方へ駆け出していこうとしたので、

「あ、おい…どこに…」

「みずうみ。」


振り返りに弟の口からそう発せられると、翼を広げて山の頂きに向かって飛び立った。

「みずうみ…?」

暫く不審がっていたが、気を取り直し麓の森に朝食を取ってくることにした
14/06/14 18:19更新 / みずのもと
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■作者メッセージ

竜達が棲む洞窟は岩山の上部にあって特に早朝は海風が吹き込み身も凍るような冷たさだったそうで。

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