ケイレブの災難

:: ケイレブの災難

「じゃあ、また明日ね。」
コウタたちと別れて、家に向かった。

今日も疲れたなぁ、先生には食べられるし、成績は良くないし…

俺の得意なことって何なんだ?

思いつくのが射撃しか無い。コウタやユウキには負けるけど。

そんなことを思いつつ、家の前の交差点まで来ていた。

ちょっと待て…なんか後ろにいる…なんなんだよ!

思い切って振り向いた。

そこに居たのは…ゲッコウガだった。

なんだ…ただのカエルか…でも、俺カエル嫌いなんだよなぁ…早くどっかいってくんないかなぁ…

そんなことを考えながら、青に切り替わった信号の下の横断歩道を渡る。

いい加減にしろよって俺は思った。

まるで俺の影になったかのようにぴったりとくっついて、離れようとしない。

やめてくれよ、その不気味な笑顔…頼むからどっかいってくれ!

玄関のドアに指を翳し、指紋認証のオートロックのドアを開た。

中に入って後ろを見たときには、ゲッコウガの姿は無かった。

一安心だ。しばらく胸が高鳴っていた。

キッチンで水でも一杯飲んで落ち着くのが、今やるべきことだ。

冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、グラスに注いだ。

壁の中のスピーカーからAviciiのWake Me Upが流れるようにセットした。

この曲を聴くと元気が出る。ソファに座りながらグラスの水を飲む。

明日からまた頑張ろう。

ぐっと伸びをして、少し眠りたい気分になるな。欠伸まで出てきた。

「だいぶ疲れたようだなぁ。」

「色々あったんだよ今日は…」

あることに気づいた。

俺は一人暮らしのはずだ。

瞑りかけた目を開けて、横を見てみると…………嘘だろ…

「目覚めたか?」

さっきのゲッコウガだった。

「お、お前…どうやって…」

「お前が家の中に入ったとき俺は天井に張り付いて先まわりしたってわけだ。」

「あの、出てってくれ…」

「断ったら?」

「こいつで“返り”討ちにしてやる。カエルだけに…」

「つまんねぇ…」

俺はソファの横の棚から拳銃を取り出した。

「っていうか、何でずっと俺の後を…」

「知りたいか?」

「ポジティブな内容なら話してくれ。」

「俺の前をお前が通り過ぎたとき、なんか美味そうな匂いがしたからついてきた。それくらいだ。ちなみに、服の匂いじゃねぇ。身体からだ。」

「結論は?」

「お前を喰いに来た。」

「それはお前にとってのポジティブだろ!」

「お前は俺におとなしく喰われればいいんだ。」

「いや、サイズ的に無理だ。」

「そんなことない。」

「帰れ!」

「だから、上手くねぇんだよ!」

俺は天井に向けて撃った。威嚇射撃だ。

「出て行かないと撃つぞ!」

パシッ

奴の首に巻き付いていた何かが伸び、俺の手から拳銃を弾いた。

「今の何だよ。」

「これか、俺の舌だ。」

「ますますお前のこと嫌いになったよ。」

拳銃は5m程後ろに飛ばされていた。

奴は俺をしっかりと目で捉えている。

グラスが棚の端の方にあったのに気付いた。

「何を企んでやがる?」

「何も…ただ、水を飲むだけだ。」

グラスをとって、一口飲んだきりの水を飲み干した。

そして、そのグラスを奴に投げつけた。

バリンと音を立ててグラスは割れた。奴が呆気に取られている隙に銃を取ろうと後ろを向いたときだった…

シュルっと奴の長い舌が俺の首に巻き付いてた。

銃まで、手があと数cmだった。

舌は俺の首と口元に二重に巻かれていた。

こいつの舌と唾液の匂いをダイレクトに嗅がされる羽目になってしまった。生臭い。

すごい力で後ろに引っ張られる。その度に舌が首に食い込み、首を締められる。

「動けば余計に首が締まるだけだぞ。」

首を舌の間に指を入れた。

だが、余計に苦しくなるだけだ。

最後の悪足掻きとして、ポケットのシャーペンを取って舌に突き刺した。

「いってぇ!よくも…殺すぞ。」

舌がやっと離れた。

大きく息をして、G19を握った。

「チェックメイト!」

バンッ




そんな…撃ったのに、傷がない。

そいつはよろよろと起き上がった。

バンッ バンッ……

残りの14発全部を撃ち込んだ。だが、気にしていなかった。

「俺の皮膚は拳銃の弾を遠さねぇんだよ。」

もうダメだ…

俺はその場に座り込んでしまった。

「良い諦め顔だな。」

また舌を巻き付けると、自分の口の方に引き寄せた。

俺をしっかり咥え込むと、ゆっくりと飲み込んでいった。

窮屈な胃の中で踠き、息をしようとする。

きっと大きく膨らんだ腹をさすりながら昼寝でもするつもりなのだろう。

奇妙なことに、全く胃液が分泌される気配は無かった。







意識が遠のいたときには、吐き出されていた。

ゲッコウガは携帯を俺に差し出した。

「お前の友達だ。」

電話の相手はコウタだった。

「もしもし…」

「ケイレブ、良かった。明日の数学のテストの範囲を教えて欲しいんだけど…」

「50ページから60ページだ。以上か?」

「出来れば、教えて欲しいんだ。今からそっちに行ってもいい?」

これはチャンスだ。やっとこのカエルから離れることができる!

「俺がそっちに行くよ。すぐに。」

「あ、ありがとう…」

コウタは俺のこと少し変だと思っただろうな。

「お前、まさか逃げる気か?」

「友達を助けることが出来ない程俺は愚かじゃないんでね。俺が戻るまでには消えてろよ。」

コウタの家には行ったことがなかった。

コウタの家に着き、豪邸の門のインターホンを鳴らす。

「待ってたよ。さあ、入って。」

暗闇の中に玄関への道がライトアップされた。

扉をノックすると…

「いらっしゃい、ケイレブ。」

ドアを開けてくれたのは…

今日、俺を食った先生……レシラムだった。

コウタはコイツと住んでんのかよ⁈

早速コウタの部屋に入って、数学を教える。隣からは生暖かくて生臭い風が…

「何でアンタがいるだよ。」

「授業の見学よ。」

ペロリ

「いきなり、横顔を舐めんじゃねーよ!」

「ごめんなさい。今日食べたときに美味しくてつい…」

「先生、顎割っていいか?」

俺はレシラム の顎の下に銃を突きつけていた。

一通り教え終わって、帰る準備をした。

「今日はありがとう、ケイレブ。」

「こっちこそ。俺も外出したかったからな。」

家に帰ると、あのカエルはいないようだった。

「いないか?」

もう夜も遅いし、寝るとするか…

ベッドの布団が盛り上がっていた。

布団をめくると……

俺は金属バットを構えて振り下ろそうとした。

ガシッ

そのカエルはそれを片手で受け止めた。

「ハエ叩きにしては、大袈裟じゃないか?」

「カエル退治だ。このボケ!失せろって言っただろ?」
 
「いやぁ、お前の家、気に入っちまってよ。」

「だから?」

「住んでいいか?」

この瞬間、俺は目の前のクソ野朗に357マグナムのリボルバーを向けていた。

「もういっぺん、言ってみろ!」

「俺はここに住むって言ってんだ!」

「そりゃ、面白くない冗談だ。もっと良い冗談を言ったらどうだ?」

「言えねーな。大体、年下に出てけって言われるが気にくわねー。」

「いや、ここ俺ん家だし…ってか、お前いくつだよ?」

「42だ。」

「オヤジじゃねーかよ。」

「お前と同い年かと思ったか?」

「当たり前だ!スティーブン・セガールってか?……住んでもいいが、雑用は全てやれよ。」

「全てだと?」

「出来ないなら、今すぐ出て行け!」

「分かったよ、クソガキ。」

「へへ、交渉成立だな。そういえばお前、若い頃何やってたんだ?」

「警官だったんだよ。」

俺は飲みかけのコーヒーを吹き出しそうになった。




























:: 作者メッセージ
ケイレブはコウタやユウキと同じクラスで、射撃部に入りたての高校生という設定です。また、話し手、目線ともにケイレブという設定です。
18/02/02 20:03 Haru & José(Pepe) & Javier

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35b
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