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犠牲

ある少年がファーストクラスに乗っていた。

その少年はたった1体のポケモンで連続優勝を取り続けている有名人だ。彼の隣には良きパートナーのルカリオが座っていた。

「マスター、少々トイレに失礼します。」
「いいよ、行ってきな。」
そこにコーヒーをトレーにのせたCAがやってきた。
「コーヒーいかがですか?」
「一杯もらってもいいですか?」
CAはカップにコーヒーを入れてもその場を去ろうとはしなかった。
「あの……何か……?」
「へへへ……人間のガキは美味いのか?」
「えっ…な、何ですか急に……」

するとCAの姿から大きなゾロアークの姿へと変わった。
その口元には鮮血がついていた。
「き、君は……」
少年はただならぬ恐怖を感じシートベルトを外し、逃げようと考えた。
だが、ゾロアークはすでに回り込み少年の首を掴んだ。
「小僧、逃げられるとでも思ったか?」
ベロォ
少年の顔をゾロアークの舌がなぞった。
血生臭い嫌な臭いに顔を歪ませた。
そして怪物は少年の服を切り裂き、その白い肌をひと舐めすると笑みを浮かべた。
「美味い……甘さがあるな。」
その怪物に熱いコーヒーをかると、ベルトを外し逃げようと試みた。しかし、怪物の方が速かった。少年はあっさりと捕まってしまった。
「言っただろう、逃げられはしないってな。へへへへ、頂くぜ。」
ガブリッ
「ああっ…やめろ!」
少年の口を手で塞ぎ、その柔らかな腹に顔を埋め肉と内臓を咀嚼した。
「んんっ……!んっ…」
顔を上げたその怪物は少年の血で紅く染まっていた。
「うるさいガキだ。」
そう言って首に食らいつき、頸動脈を食いきった。
真っ白なファーストクラスの席は辺り一面に血潮が飛散した。
「マスターから離れろ!」
トイレから戻ったルカリオが目を見開き毛を逆立てるようにして立っていた。
「貴様っ!」
ルカリオが掴み掛かろうとしたが怪物の鋭い爪がルカリオの腹を引き裂くほうが速かった。
「ガキを食い終わったら貴様も片付けてやる。」


ケイレブとゲッコウガはファーストクラスに戻ろうとしていた。すると、ゲッコウガがある異変に気がついた。
「鉄臭いな……血の匂いだ!」
ファーストクラスに入ると同時に銃を取り出して、それを突き止めた。
ズタンッ ズタンッ ズタンッ……
ゲッコウガとケイレブはその怪物……大きなゾロアークに全弾撃ち込んだ。

弾は急所である頭と喉、心臓を貫通していた。
ゾロアークは少年の小腸を咥えたままその場に倒れた。
ケイレブは両者の首に手を当てた。
ルカリオは腹の傷を押さえていた。幸い、急所は外れていた。
「マスターは……マスターはどうなった⁉」
ケイレブは首を横に振った。
「そうか……」
ケイレブと生き残ったCAはルカリオの止血を急いだ。
ルカリオの出血が収まり、CAがその少年にブランケットを被せようとした。
「すまないが俺にやらせてくれ。」
CAはルカリオにそのブランケットを渡した。
「マスター、本当に申し訳ない。俺があの場にいることができたら……救えたかもしれない。」
手を少年の目に当てて瞼を閉ざした。

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