連載小説
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過酷な空間
ごくり…

とうとう、ビスキュイは呑み込まれてしまった。
食道の蠕動運動はビスキュイを締め付け、ビスキュイの自由を奪っていた。ヌルヌルとした粘膜はルポの唾液に濡れたビスキュイをもっと濡らし、落ちてゆく感覚は、ゆっくりであるものの、奈落の底へと落ちてゆくように恐ろしいものであった。しばらくすると、締めつけはなくなり、少し広い空間に出たのだった。
そう、そこはルポの胃袋の中であった。
胃壁はツルツルしているといった状態なのか、ヌルヌルしているといった状態のかそんな感じの所だった。とにかく、ビスキュイには脱出する事はほぼ不可能な空間だった。
ビスキュイは胃袋がどんなものか、全く知らなかった。とにかく、危ないのであろうとだけ分かったので、抵抗すれば吐き出してもらえると思ったビスキュイは抵抗する事にしたのだ。
どれだけ抵抗したのだろう。
きっと吐き出される。そう信じて抵抗してきたビスキュイに、踏ん張っていた時以上に、疲れが見え始めた。
しかも、獲物が暴れるので、胃袋が反応したのだろう。胃袋が消化を始め、胃の肉壁はグチュ、グチュッ…っとビスキュイを揉み込み始めたのだった。

「ひゃ…ああんっ…」
その蠕動運動がビスキュイの全身を揉みこんでいった。激しく絞るような締め付けと開放の繰り返しが苦しかったのだろうか、はたもや、気持ち良かったのだろうか。
ビスキュイは喘ぎ声のような声を出していた。
だが、ビスキュイは勇敢な猟犬なのでこんな事になるのが悔しくて仕方がないのでした。だから、疲れた体に鞭を打って、もっと強く、抵抗しました。消化が始まり、胃液が体にかかりヒリヒリとした痛みが来ても抵抗し続けたその時です。またさっきの響くような声が聞こえてきました。

「まだ弱らないのか…全く、儀式を早く終わらせたいのじゃないのか?ビスキュイが我の娘になるのが我も楽しみだしな。だからさっさと溶けてしまいな」
その言葉を告げた直後、胃液の分泌量を増やしたのであろう。胃液は今よりも多く分泌され始めた。ビスキュイはルポ初めて出会った時、声が美しいなと感じた。だが、今ではその声が悪魔の声にしか聞こえないぐらいだった。

胃液が増えた事により、どんなにもがいても全く無駄だった。
14/03/15 23:01更新 / みぞれ
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