連載小説
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錬金術士の魔女
町から遠く離れた大きな森を抜けた湖の近く
そこには小さな家があります。
町の人は皆、口を揃えて言います。「あの家に近付いてはいけない。魔女に食われるぞ」と。
その町の童話にはその家をモチーフにした物があるとかないとか。
森の近くは立ち入り禁止。しかし、勿論禁止していても踏み込んでいく人は大勢居ます。
魔女狩り
自殺志願者
迷い込んだ人
今回のお話はそんな人間ではありません。
迷い込んだのはその中には居ません。
迷い込んだのは・・・
ーーーーーーーーーーー





チュン・・・チュチュ・・・
時計を見るともう午前5時。儂は読んでいた本を閉じ欠伸をする。そろそろじゃの、と椅子から立ち上がり大鍋を見る。
「なかなかのできじゃ。」
棚に置いてある空瓶で掬って蓋をする。出来た量は少ないので空瓶は5.6個あればたりるはず。
「次は何を作ろうかのう・・・むむむ。」
強力な睡眠薬、惚れ薬、錬金布。高値で売れるが・・・今は必要無い。創作意欲はあるが何を作ろうかは決まらない状態じゃ。
こんな時は散歩をする。山菜採りもついでにの。
部屋着であるローブから白衣に着替えポケットに色々な物を詰める。
ペン、メモ帳、注射器、薬、カゴ、さっきのビン、それにチョークも。
歯を磨き、顔を洗う。鏡を見つめ自分の姿を確認する。
腰まである紺色の髪。瞳の色は血が映っているように光る深紅色。外に出ることがあまり無いため白い肌。ここまでは自分でも意外と綺麗なんじゃないかと思っておるのじゃが・・・
「やはり戻らぬか・・・」
顔は小学生ぐらいの顔立ちじゃった。
顔だけではない。身長もかなり小さく、この前測定すると143cmだった。
それに、明らかに普通の人間ではないことの証明、鬼のような小さな角がちょこんと付いている
「嫌じゃのう・・・若いというより幼いだけじゃ。」
自分が何歳かなど覚えておらぬが、何年経っても何歳になっても容姿は変わらない。困ったものだと儂は角を触りながら思った。
入り口に掛けてある錬金術士のバッジが付いた帽子を被り、家を出る。
「よし、今日は森まで行くかのう」
日頃運動をせず、家でニートの様な生活をしている儂のような錬金術士にとっては3km程離れた森でさえかなり遠い。早く行かねば昼が来る。
「良い天気♪」





森に入って直ぐに異変に気付く。森が騒いでいた。
よっこいせ、と近くにあった切り株に腰を降ろす。カゴを背負っているため肩が痛くなったしまった。
「外見は幼くても中身は歳相応じゃ・・・」
さて、儂は耳に手を当て神経を集中させる。北へ・・・南へ・・・東へ・・・西へ・・・
集中力を高めどんどんと聴こえる範囲を延ばす。・・・見つけた。
「なんじゃ・・・ただの魔女狩りか・・・」
銃や刃物何かを持ち鎧なぞ着とる者がこの森に入るのはほぼ確実に魔女狩りであろう。
集音を止めようとしたその時、泣き声を聞いた。
その声は集音する必要もないぐらい近く、儂の後ろにある茂みからだった。
何故今まで気付かなかったか謎だ。
近付いてみる。そこに居たのは、雪のような純白の髪に桜の髪飾り。どこかの学生のようなブレザーを着た16歳程の少女(今の儂から見れば女の人と言うべきだが)だった。体操座りして顔を伏せている。
「おい主、一体何をしておる。」
そう声を掛けて、肩を掴むと
「きゃぁぁぁぁぁ!!!!!」
悲鳴をあげ暴れだす。儂は慌てて少女の口を塞ぐ。
顔は活発そうで、儂の次に可愛い顔をしていた(勿論冗談じゃ)。
「んんー!んーんー!」
「落ち着け、害をなす気は毛頭無い。こんなところで何をしておる。」
塞いでいた手を離すと。ようやく落ち着いた少女は話をしてくれた。
「人を捜しに森へ入ったら道がわかんなくなっちゃうし、魔女と勘違いされて銃を向けられるし・・・」
「まあ、目立つ髪色に髪飾りじゃかろのう・・・」
少女はガタガタと震えるている。
こんな場所に人探しとは、その人物は中々の物好きじゃな。
「ちょっと待っておれ、動くのでは無いぞ?」
そう言って儂はポケットからチョークを取り出す。
座っている少女を中心に円を描き術式を組み立てていく。久しぶりに魔法を使うのであっているかどうかはわからぬが、無いよりはマシじゃ。
できた魔法陣の文字がどんどんと少女に貼り付いていく
「な、なんですかコレ!?」
「気付かれにくくなる魔法じゃの。ここから北へ行けば無事にラフィーサの街に着くじゃろうよ。」
「腰が抜けて立てないんですが」
「這って帰れ」
少女は儂に礼を言って本当に北へ這おうとしている。街に転送してやろうかと思ったが、まあ別に大丈夫じゃろう。さて、儂は掃除でもするかのう。
くるりと振り返ると、やはりそこには魔女狩りが近くにいた。
4人、ガシャガシャと鎧の音を鳴らし、あちこちの茂みを棒で叩いていく。
一人がこちらに気付いた。続いて二人、三人。
「おい、こんなところで何をしているんだ。」
さっき儂が少女に掛けたのと同じセリフを魔女狩りは儂に言う、儂とは違って低く怒っているかのような声だが。
「お前が魔女なのか。」
一斉に儂に銃口を向ける。銃の種類に詳しくはないし興味も無いが、一発当たれば普通の人間なら死ぬというのはわかる。怖い怖い。
「ただの可愛い錬金術士じゃ♪」
ニコッと笑い人指し指を頬に当ててみせる。中身の年齢的にこれはキツいが、しかたがない。
「それじゃ、儂はこれで・・・」
儂はくるりと背を向け歩き出す。しかし
腹部に痛みが走る。そして銃声。
撃たれたのだと気付くのに数秒程掛かった。
「っっ!」
言葉を失ったように怯んだのは儂ではない。奴らじゃ。まあ、無理もなかろう。普通に銃弾を受けピンピンしておるのだからのう。
「何故、儂が疑われたのかと悩んだが・・・ソレか」
儂を撃った一番右にいた男の手元を見ると、見覚えのあるコンパスの様な物体がチカチカと光っていた。
あれは昔、キュベレ王国に住んでいた頃に儂が開発したアイテム。
「今だにそんな古めかしい『嘘発見器』を使っておるのか・・・進歩せんのう。あれから全く改良されておらんではないか。」
儂はもう嘘発見器の能力を飲み薬にした『嘘発見薬』を作り出したというのに。儂のような天才はあれから一人も生まれておらんということか。
「正直に吐け、お前は何者だ」
「儂はクロム=ネクロフィリア。ただの石を金に変え、動かぬ物に命を吹き込む錬金術士。しかし、それと同時に他者の生命を喰らい他者の生命を呪う魔女じゃ。」
簡単な話、錬金術士の魔女。
話にも飽きた。儂はあまりお喋りじゃないからの。
「そろそろ体が動かんのでなないか?」
「!?なんだこれ!」
魔女狩り共はもう動けない。
奴らは儂の目を1分以上見ている。そろそろ魔女の魔力に当てられる頃合いじゃて。
「リーダー意外は全員帰ってもらおうかの♪」
一番右端の魔女狩りに近付く。悲鳴に似た声で騒ぐ。
「胡蝶の夢」
儂は人差し指で魔女狩りの額を突き魔法を繰り出す。思わず笑みが溢れてしまう。こんな至近距離で強力な幻覚魔法・・・こ奴はもうただの歩く屍じゃ♪
「あぁ・・・あ・・・」
一人撃破。続いて二人目に近付く。こ奴は勇敢じゃのう。まだ抵抗しようとしておるわ。
「まるで勇者じゃの。勇者といえばドラゴン・・・いいことを思い付いた♪」
儂はこ奴に瞬間移動の術式を掛ける。行き先じゃと?儂が昔旅をした時に見つけたドラゴンの巣窟じゃ。
瞬間移動を発動させると奴は一瞬で巣窟へテレポートされた。楽しみじゃの♪直ぐに殺されるか、食われるか、オモチャにされるか・・・また今度見に行ってみるか。むっふふふ。
さて、次じゃ。コイツは帰らせる。街に帰って魔女の噂でも広めてもらおう。だが普通に帰しても面白くない。
ポケットに入れておいたビン。家を出る前に作っておいた薬が入っている。効果は鈍足になる。
地味な薬じゃが効果は今からきっちり24時間。この森は夜中色々な動物がいるからの、生きて帰れるかねぇ。
「これを飲んで帰れ。」
そんな事とは全く知らない魔女狩りは勢い良く飲み干して走っていった。効果が出始めるのが3分後くらいか。それまでに走り回っておくがいい。
さあ、残りは一人、嘘発見器で儂の嘘を見抜き儂の体を銃で傷付けた、魔女狩りのリーダー。
「命だけは助けてくれ!頼む!」
「こんな事になるのなら魔女狩りなんぞせぬ方が良かったのう?」
奴だけ残したのには理由がある。もうすぐ正午だから。
「お昼ご飯じゃ♪」
16/04/02 00:11更新 / イル
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■作者メッセージ
3/6 キャラクターの見た目描写を追加です♪
次はクロム(魔女)の食事なのですが・・・何に変身させるかあんまり考えてないんですよね〜(オイ
思い付き次第書き始めますので続きをお楽しみに!

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