面白半分

はじめに
この話は『合わせ鏡』で登場したバクの友達のユキの昔やってしまった罪深きことを書いた物語である。流血描写を含むため注意を願いたい。

舞台はアメリカのマイアミ。
日付けは10月29日。


「なぁケビン?」
ケビンと呼ばれた、窓の外を見ている青年は、その声の方を向いた。
「なんだい、カーター?」
雑誌を持っている青い瞳の青年、カーターはケビンにその雑誌のあるページを見せた。
「降霊術?」
「ああ。」
「何でまた…」
「もうすぐハロウィンだろ?ハロウィンといえばゴースト(オバケ、幽霊)だろ?そこで思ったんだが、本物を登場させたら盛り上がるよなぁって。」
「1つ言わせてもらうが、俺は幽霊や悪魔を信じちゃいない。」
「なら、尚更だ。今夜、家に来いよ。この『合わせ鏡』をやろうぜ。」
「絶対あり得ない。それが本物なら、この学校の玄関なんか幽霊の通り道じゃないか?鏡が向かい合っているんだ。」
「でも、もしかしたら成功するかもしれないぜ。」
「まぁ、科学的根拠はないが、どうなるか見届けようじゃないか。」

その夜、2人は集まって準備をした。
「大体2mの鏡だ。」
「この2つを向かい合わせるんだよな。」
「お前の大きさくらいの未確認生物が欲しい。」
「出来ればの話だがな…」
雑誌には深夜2時〜明け方4時にかけて鏡同士を向かい合わせ続けると書いてある。
カーターはベッドの下から、何やら黒いケースを取り出した。
中から出したのは、SIG SAUER(シグ ザウエル)P228という拳銃だった。
「よりによって、13日の金曜日だ。」
「拳銃なんか持って、お前ビビってんのか?」
「当たり前だろ!」

2人は1時まで仮眠をとった。
「あと1時間だ。」
「暇だから、トランプやらね?」
「よく、こんな状況でそんなこと言えるよな。まぁ、俺も何かしたいって思ってたけど…」
「ババ抜きでいいか?」
「いいよ。」
やっているうちに2時を知らせるアラームが鳴り出した。
2人はこのとき目をこすり、眠くなってしまっていた。

どのくらい経ったのだろうか
気づけば、冷房の効いていた部屋の中は暑くなっていた。
「暑ちぃなぁ!」
「くそ暑い!」
2人が目を覚ましたとき、目の前に何かがいた。
「ポケモンのバクフーンか?」
「な、何で……そんなものが…」
2m近い、その大きな未確認生物は高い目線で2人を見下ろしていた。
2人はコンフューズドになってしまい、何も発することが出来なかった。
すると、目の前のバクフーン(?)が口を開いた。
「私をここに呼んだのはあなた達?」
呼んだという言葉に2人は疑問を感じた。
雑誌には、悪魔や幽霊が鏡と鏡の間を通り過ぎる、いわば、鏡から鏡へと走り抜けるときを狙って捕まえる方法が書いてあったのだ。自分から出てきて、人と話すとは書いてなかった。
「答えてくれる?あなた達が私をここに呼んだの?」
カーターが首を縦に振った。
「そう…何のために?」
ケビンは全く話そうとはしなかった。
白と銀の体毛の化け物はケビンを睨みつけた。
「あなた達の答え次第で夜の明け方が変わるのよ。」
「えっと…」
ケビンよりも先にカーターが話し始めようとした。
「ハ、ハロウィンで…ゆ、幽霊や悪魔がいたら盛り上がると思って…実験で合わせ鏡をやりました…」
「やってられるか!そんな茶番はいい。どうせお前の仕組んだドッキリなんだろ、カーター!俺はもう帰らせてもらう。」
そのとき、その化け物は指を鳴らした。
ガチャ
ケビンが開けようとしたドアに鍵がかかってしまった。
「何だよ、また茶番か?」
カーターの方を向いたとき、恐怖で顔を真っ青にしていたのがわかった。
さらに、彼女は2回ほど指を鳴らした。
ガチャ ガチャっと、家中の鍵が閉まる音が聞こえた。
「これで、誰も逃げられないわね。」
ケビンはあることを思い出した。
(決して、面白半分ではやらないこと。全て、自己責任でやること。)
ページの一番下に書いてあった警告だった。
「これ……ドッキリじゃねーのかよ……」
カーターは過呼吸寸前になり激しく息を吐き出していた。
ケビンはカーターのベルトに挟んである拳銃を抜き取った。
バン バン……
弾は目の前のバクフーンに確実に当たった。ほぼ急所の胸に2発撃ち込んだのだ。
「面白いでしょう。私を殺して次は何をする気だったの?」
出血はすぐに止まり、もとの毛並みと変わらないくらいに修復された。
バン バン バン……
何度撃ち込んでも結果は同じだった。
「お前…一体…………」
「私?そうねぇ……悪魔とでもしておこうかしら…」
「悪魔かよ…」
カーターが隙を見て逃げだそうとしたが、白い悪魔はそれを見逃さなかった。
彼女は何かを引っ張るような仕草をした。
すると、カーターの体がドアノブを掴んだまま浮き上がり、悪魔の方に引き寄せられていた。ドアノブを離してしまったカーターは彼女に受け止められた。
彼女はカーターをがっしりと捕まえていた。
「ふふふ、捕まえた♪…さて、どうしてあげようかしら?」
「た、助けてください!」
「残念だけど、その選択肢はないわ……そうね…食べてしまおうかしら…」
2人は凍りついた。
悪魔は大きく口を開けて、カーターの胸まで入れてしまった。
必死に足をばたつかせながら抵抗していた。
ガブリ ゴリッ
何かが砕けるような音がして、ばたついていた足がだらんと垂れ、その先から紅い液体が床に水溜りを作っていった。
彼女が咀嚼するたびに紅い唾液が口から垂れ、硬いものが砕ける音や唾液が混ざり合う音が聞こえた。
ごくん…
意地悪げに喉を鳴らして飲み込んだ。
お腹の膨らみは徐々に小さくなっていく。
唾液の糸を引かせながら舌舐めずりをする。
「面白半分でやらなければねぇ…あなたは……特別に丸呑みにしてあげるわね。」
「ま、丸呑みって………俺を食うのか?」
「当たり前でしょう。」
「悪魔なんているはずがない……どうせ本物そっくりの着ぐるみだ!」
「ふーん、私が着ぐるみかぁ……じゃあ、それが本当か自分で確認したら?」
グワッと大きな口を開けた。
血生臭く、獣臭い生暖かいしっとりと湿った風がケビンの髪を揺るがした。
ケビンは顔を背けたい気分になった。
「や、やめろ!」
「着ぐるみじゃなかったでしょう?」
「離してくれ。もういい…」
「離す?勘違いしてるの?まさか、私があなたを食べるのを諦めたとでも思った?」
ケビンの表情は絶望そのものだった。
「その顔、可愛いわね。でも、もうお別れよ。私のお腹で反省しなさい。」
白い悪魔は大きく口を開けると、ケビンを上半身まで咥え込み、存分に舐め回して味を吸いとっていった。
「おいひー」
彼女は意地悪く臭い唾液のプールにケビンの顔を沈める。
「くそっ!」
ごくん ごくん……
その唾液もろともケビンは呑み込まれてしまった。

「俺も…こいつの一部になっちまうのか…」
彼女の胃の中で蹲りながらそんなことを呟いた。
寄りかかっていた胃壁からは胃液が分泌され始め、服や皮膚を溶かしていく。
「痛っ…」
悪魔は膨れたお腹をさすっていた。
「コノヤロウ!」
ぐにょ
思い切り胃壁にパンチを入れた。

「あら、まだ生きていたのね。さっさと天国へお帰り。」
ぐっとお腹に圧力をかけた。
腹の中ではケビンがもがき苦しんでいた。
「やめろぉぉ!」

白き美しい悪魔はお腹の膨らみが無くなると、鏡の世界へと戻って行った。

昼時、その部屋には警察が来て中を調べていた。
「どうです?」
「友人を射殺して、自分は自殺したようだな。」
そこには、撃たれて壁にもたれかかって座って既に息の無い血塗れのカーターと自ら頭を撃ち抜き、右手に拳銃を握ってソファにもたれかかるケビンの姿があった。
このとき鏡は壁に立て掛けられていた。


〜〜〜〜〜
「ユキって、そんなこともやるの?本当に警察は気づかなかったの?」
「ユキも俺もそれが専門だからな。証拠は残さないぜ。」
「怖いね。」
その話を聞いたのは寝る前だった。
「あなたのシナリオもいくつもあるのよ。」
「や、やめて…」
「あなたがいい子でいれば…殺しはしないかもねー。」
いつものようにバクとユキの間で寝るが、2体とも僕の顔を舐め回していた。
(う…く、臭い…)
そのうち、ユキが僕を抱き寄せた。
(何考えてんだ?)
ベロリ
暗い部屋の中で水っぽい音はしばらく続いた。
はむ
(え⁈…)
ゴクン ゴクン…
彼女は寝ながら僕を食べていた。
(やめてよ!お願いだから!)


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