連載小説
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3
「え、え〜と…」
突然現れた女の方を前に、私の思考回路は停止してしまいました。

「帰れ」

「そんなこといわないでよ。せっかくこの娘に被食フェチについて色々と教えようと思ったのに」

「洗脳する気満々じゃねぇか。お前の[教える]はたちの悪い布教活動みたいなもんだろ」

「いや、そこまで言うことはないでしょう。確かに少し主観は入るけどさあ」

「お前の《少し》は俺にとっての《膨大》だよ。まったく、なにがそこまでお前を駆り立てるんだ?」

「ふっふっふっ。し・り・た・い?」

「…いや、遠慮しておく」

「そう、残念」

…。
頭を振って思考を再会。

「あの、銀狼様。その方はいったい…」

「ああ、気にするな。こいつは「やあやあどうも初めまして。私はシルガ、彼の妻やってます。どうぞよろしく」

「あ、はい、よろしくお願いします」

この方、銀狼様を遮りましたよ。
どうやらこの女の方はシルガさんというようです。
とても気さくな方ですね。生け贄の方かと思いましたが、銀狼様の妻だったようです。

って

「つ、妻あああぁぁぁぁ!?」

妻ってつまり、奥さん?! 

「ぎ、銀狼様。生け贄を食べるというのは、まさか、その、そういう意味で…?」

「そんな訳あるか!」

「はは、違う違う。」

お二人の対称的なツッコミが私に炸裂しました。

「私とギン君は、普通に出会って、普通に恋をして、そして普通に結婚したんだよ。おとぎ話でもよくあるだろう?」


確かに、シルガさんの言うとおり。おとぎ話の中には、神獣や霊獣と結婚したという話がよくあります。

おとぎ話の中には、ですが。

「その、無礼を承知でお尋ねしますが、お二人は、具体的にはどのようにして知り合ったのですか?」

少々不躾かもしれませんが、やはりそういったところは気になるものです。

幸い、お二人は対して気分を害すこともなく答えてくださいました。

「出会いか…あまりいい印象は受けなかったな」

「私は一目惚れだよ。見た瞬間にこの狼だ!って思ったもん」

「嘘つけ」

「ホントホント」

ずいぶんと両極端な意見です。もしや、出会う前は依頼を受けた討伐者と魔物のような関係だったとか?

「始まりは、俺がコイツを食ったところからだな」

「そして私が食われ損なったところからだね」

もっと単純明快。
捕食者と被食者の関係でした。
絶句した私を前に、シルガさんは面白そうに、銀狼様は溜め息混じりに口を開きます。

「こいつは少し変わった性癖を持っていてだな…」

「YES!I am 被食フェチ!」

でました、被食フェチ。
銀狼様が苦手とする(というよりもただ単に頭が上がらないだけのような気もしますが)人のことですよね。

「その、被食フェチというのは、一体どのようなものなのでしょうか?」

私が言い終わるのと、シルガさんが目を輝かせるのはほぼ同時でした。

「知りたい?知りたい?知りたいよねぇ〜。よし、この私が被食フェチについて徹底的に、それこそ耳にOctopusができるくらい教えてあげるよ!」

おくとぱす?あ、「たこ」ってことですね。
使い方は合っているんでしょうか?
銀狼様が何かたしなめるようなことを言われたようですが、彼女の耳には届いていない様子。

こうして、「シルガさんの被食フェチ講座」はスタートしたのでした。




「そもそもの始まりは五十億年前まで遡る」
「バカ、遡りすぎだ」
「いやいや、食の起源で結構古いんだよ?」
「無関係だろ端折れ」
17/01/03 22:04更新 / 兜燐
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■作者メッセージ
お待たせいたしました。諸事情により、前回の投稿から一月近くの間が空いてしまいました。申し訳ありません。このシリーズを楽しみにしてくださっている皆様には、深くお詫び申し上げます。

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