連載小説
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引換の命
50匹程いる猟犬を連れて森を歩く狩人がいた。狙うは黒々とした♀のフェンリルである

このフェンリルは何年も前から生きていて昔は白かったが年数が経つにつれ黒くなり、また何年かすれば銀色の胸の毛も黒くなるという伝説や、かつてたった1日で3つの村を滅ぼしたという話もあり恐れられていたため、今まで何人ものの狩人がこのフェンリルを狩ろうとしたが誰一人成功した者はなく、しかも人間を襲うので被害を防ぐには犬に襲わせて気を惹かせて銃で撃つしかしか方法がなかった。

それどころか50匹の猟犬は村にいる最後の猟犬達なので今日こそ倒さなければいけないのだ


ここを抜ければもうすぐフェンリルの縄張りだ。狩人は慎重に森を進んだ


「キューン…?」


1匹の猟犬が心配そうに狩人の顔を見ながら声を上げた

彼女の名はビスキュイという。耳は長く、羽の代わりなので飛べ、首輪みたいな模様はチョコのようで、体は足と尻尾と耳の先以外クリームのように真っ白で耳にはいちごがついている小型の猟犬だ

狩人が狩人になった時に記念として父から貰った、狩人の愛犬のケーク,スパニエル
だった。この犬種はお菓子の世界からやって来たと言われていてその為か、ケーキの匂いがするのだった

これだけ聞くと愛玩犬に見えるが実はすばしっこいのでキツネやイタチ以外にも熊の足元をチロチロと走り惑わせたあと噛み付き、惑わせる。などの事ができる優秀な猟犬なのでした。



そして、とうとう奴の縄張りに入ったのだ


もちろんそこには胸の体毛以外黒々としていて、首には十字架の首飾りをつけ、6本の角を持つ♀のフェンリルがいた


「さあ、行って来い!」
狩人はそう叫ぶと猟犬達を繋いでいた紐を外したのだった

また前に他の狩人が連れていた猟犬と同じくフェンリルに食い殺されていくのだろうか…
 
と思った

だが、今日はなにかおかしかった。

猟犬達が何故かフェンリルに襲い掛からないのだった。そしてフェンリルは猟犬を見回したあとこう言ったのだった

「そこにいるのだな、狩人よ、お前の居場所は分かっておる。まあ命は助けよう。そして他の猟犬も返すし、もう人間も襲う事を辞める。その代わりここにいるケーク,スパニエルをよこせ。こいつは生贄だ」

その声は美しく森に響いていた

「っ…とりあえず仲間と相談するか…」

そう呟くと狩人は

「お願いだ、一旦村に帰って相談させてくれ」

とフェンリルに行った

「…まあいいだろう。じっくり相談して来い。どうせ私は結果がわかっているがな」

フェンリルは笑いを含んだ言葉でそう言い、村に帰って相談することを許可してくれた。だが、その言葉には、何か嫌な予感を感じさせた


もちろん、その嫌な予感は当たってしまったが


村に帰ると、狩人仲間が迎えてくれた。理由は狩人も犬たちも無事に帰ってこれたからだ。こんな時にビスキュイを生贄に出さなければいけなくなったなんて言いづらかったが、ここは仕方ない。とタカをくくって言うことにした。もちろん、狩人が想像した通りの言葉が返ってきたのだが。


「猟犬1匹でこれからもう村が襲われなくなるなら良い事じゃないか、だからビスキュイを生贄に出してこいよっ」
だった。

狩人はもしかしたら父ならばと思ったが、父すらも
「またよく似た猟犬を探して来てやるから生贄に出せ。」
と言うのだった

狩人はひと悶着相談したあと
「分かった、ビスキュイを生贄に出す」
と小さい声で言ったのだった


この日は全く眠れず、長く感じる夜だった。理由はもちろんビスキュイを獰猛なフェンリルに渡したくない、その気持ちからだった。日が明けると、その気持ちはもっと強くなっていた。特に辛かったのは、何も知らないビスキュイがいつも通りに甘えてきた時だった。

とうとう、フェンリルの縄張りへと行く時間がやってきた。今日は他の猟犬は連れて行かずにビスキュイと狩人だけでフェンリルの縄張りへ行くのだった。

フェンリルの縄張りに近づくにつれ、朝でも夜のように暗くなっていくこの森は、昨日以上に不気味に感じるように思えた。

そして、フェンリルの縄張りにつくと、縄張りの一番分かり易いところにフェンリルの青い透き通るような色をした目だけが光っていた。

「来ると思っていたぞ、さあ、そのケーク,スパニエルを我に渡すんだ」
その光の所から聞こえる声は、昨日と変わらず美しいような、恐ろしいような声であった。

「ああ、わかっている。ビスキュイをお前に渡そう」

そう言ったあと、ビスキュイを抱きしめ、
「こんな事をしてごめんな、さあ行っておいで、ビスキュイ」



ポツリとそう言うと狩人はビスキュイを抱いたままフェンリルの青い目の光る場所へ行き、そこにビスキュイを置いたのだった
14/03/15 23:00更新 / みぞれ
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■作者メッセージ
一体どうやってケーク,スパニエルが人間界にきたんだよっていう謎は無かった事にしよう。

仲良しモフモフな愛捕系小説を書こうとした結果またもやハードな方向に行ってしまったのは内緒

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